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2024.01.12 16:00

成長戦略であり次世代リーダーを生み出す土壌でもある、BATジャパンのDE&I推進

Forbes JAPAN主催による「WOMAN AWARD2023」が10月31日に開催された。これは、ジェンダーギャップ解消、企業と女性のエンパワメントを目的として、2016年に発足した日本最大規模の女性アワード。今年は企業42社、個人5名が受賞した。

授賞式に登壇した企業のひとつが、マルチカテゴリー消費財メーカーの「BATジャパン」だ。同社は、2023年4月に女性であるエマ・ディーンが社長に就任。現在の女性管理職比率は40%近く(※1)と、日本の平均9.8%(※2)を大きく上回っているほか、現在は30カ国近くのスタッフが籍を置いている。女性活躍はもちろん、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の実現においても先進企業といえるだろう。

BATジャパンはDE&I推進をどう捉え、実践してきたのだろうか。人事&インクルージョン責任者のキン・ヨンシンと、今年4月に日本に赴任してきた副社長のマリエル・マクラムのインタビューを通して、同社の取り組みの背景にある戦略と、今後の日本におけるDE&I推進のヒントを探った。


ライフステージの変化に左右されない、キャリア構築を支援


BAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)は1902年に設立された、イギリスを本拠地とする世界有数のマルチカテゴリー消費財メーカー。世界中に社員5万人を有し、その一員であるBATジャパンは1984年にたばこ販売事業を開始。現在は健康リスク低減の可能性を秘めた加熱式たばこなどの代替製品の取り扱いが増え、そういった代替商品の売上が、日本でのビジネスの半分以上を占めるようになるなど、ここ数年でビジネス環境は大きく変化している。

そんな中、4月からBATジャパン副社長に就任したのが、南アフリカ出身のマクラムだ。2007年にBATグループに入社し、ニュージーランドや南アフリカ、イギリスを経て日本へと、約20年にわたり世界を舞台に活躍を続けてきた。20年にはコロナ禍のイギリスで第1子を出産し、23年に家族とともに日本という全く環境の違う新天地でキャリアを築くことになった。

「若いころから国際的な企業でキャリアを積みたいと考えていました。いろいろな企業を検討したなかで、私の目指すキャリアに一番合うと思ったのがBAT。ローカルマーケットから本社部門まで、この20年間、BATを通して本当に多様なマーケット、国やその文化に触れることができました」

グローバルなキャリアを希望するビジネスパーソンの悩みは、ライフステージの変化と折り合いや両立だろう。マクラム自身も結婚や出産といった大きな転機があったが、「これ以上求める支援が思いつかないほど、会社が全面的にサポートしてくれた」と語る。

「私の場合は産休後の育休5カ月目ぐらいで会社と相談し、6カ月で職場に復帰することにしました。復帰後は出社勤務と並行して自分の希望する時間帯での在宅勤務も許可してもらいました。子どもの体調や行事で就業時間をずらしたり休暇をもらったりしても、居心地の悪さを感じることなくフレキシブルに働けていることに感謝しています」(マクラム)

BATジャパン 副社長 マーケティング責任者 兼 BAT 北東アジアエリア マーケティング・ディレクターのマリエル・マクラム

BATジャパン 副社長 マーケティング責任者 兼 BAT 北東アジアエリア マーケティング・ディレクターのマリエル・マクラム


転居を伴う異動では、パートナーのキャリア形成とのバランスも重要なポイントだが、今回の日本赴任において、マクラムのパートナーの仕事についても企業のサポートがあったため帯同することとなった。とはいえ、小さな子どもの生活環境も含め、不安はなかったのだろうか。

「異動打診を受け入れる前に、日本での勤務経験者やBATジャパンに勤務中の人に話を聞ける場が準備されました。また、BATには事前に現地に行って環境をリサーチするための“look & see”という制度があり、現地の専任業者から希望に沿った学校や住む場所の提案を受けて、実際に見学することができます。日本に住んで働くことがどういうことかを自分で見て、理解した上で選択できたので、想像と現実のギャップはほとんどありませんでした。パートナーの日本でのジョブオファーに関しても会社のサポートがあったので、家族みんなが日本での生活を楽しんでいます」(マクラム)

フレキシブルな働き方を許容し、転居に伴う家族へのサポートも充実。BATでは、ライフステージの変化がキャリアの中断に直結しやすい女性たちをはじめ、さまざまな支援が整っている。その充実した制度やバックアップ体制の背景について、キンは次のように語る。

「社員に業務に全面的にコミットしてもらうためには、それを可能にする環境を会社が整えなければなりません。それは女性だけでなく、すべての従業員にとっても同じこと。ハイブリッドな働き方やフレキシブルな勤務時間といった柔軟な環境づくりにより、心理的安全性を確保しつつ、ライフステージの変化に左右されずに持続可能なキャリア形成をしてもらう。そのことが個々のベストパフォーマンスや新たな価値を引き出し、企業としての強みにつながっていくのです」

「本来あるべき姿」の追求が、自然とDE&I推進に


前述のとおり、BATジャパンの女性管理職比率は現在40%近く(2023年9月末時点)に達しており、5年前の22%から大きく改善した。日本を含む北東アジアエリアにおける執行役員の女性比率にいたっては、40%という目標を既に達成している。その成果について、キンは次のように要因を分析する。

「採用の時点で男女比率を5:5にすることは、持続的に女性管理職を増やす上で重要なポイントです。多様化する消費者のニーズに応える優秀な人材を確保するためには、少なくともジェンダーバランスは大切です。また『グローバル・グラデュエート・プログラム(GGプログラム)』というマネジャーやリーダー候補を育成する新卒社員向けの人材育成プログラムがあります。実務と体系的な能力開発を組み合わせたもので、早い段階でリーダーに求められる思考とスキルが身につきます。このプログラムからはすでに女性経営陣を輩出しています。さらに、『Women in Leadership』という、女性管理職を対象とした2週間のグローバル研修プログラムもあります。ライフイベントによって女性社員がキャリアを中断することなく、また円滑に職場復帰できるような環境づくりに積極的に取り組んでいます」

BATでは男女の賃金格差はなく、そのときの人材によっては女性の方が高い結果になることも。特別な施策を計画したわけではなく、企業が社員に期待する能力を支払う「職能型」ではなく、職務を詳細に分析・評価する「職務型」の制度を取り入れるなど、「本来こうあるべき」という考えに基づき行動した結果なのだという。

「もちろん、今ある制度が完璧ではありません。社員にとって働きやすい環境や社会状況は変わってくるので、それに合わせて制度も変化していく必要があります」(キン)

「私自身、自分の環境と気持ちの変化を体験しています。若い頃は短いスパンで世界を飛び回りましたが、家族ができた今では、少し長めに赴任して落ち着いて仕事がしたいですし、将来的には両親の近くでの勤務を希望するかもしれないと会社には伝えています。描いているキャリアプランやその時々の不安は、会社側と対話して伝えることが大事です。会社側は社員を信用し、理解を示す。そういった関係性を作っていくことが、DE&Iの実現やキャリア構築に最も必要なことなのではないでしょうか」(マクラム)

世界で戦えるリーダーを育成する土壌にも


世界170カ国以上で消費者に向けた事業を展開するBATにとって、女性活躍に限らずDE&Iは非常に重要な「戦略」である。世界中の消費者の多様かつ進化するニーズを理解することが企業の成長に直結するからだ。

「BATジャパンでは現在約30カ国の多様な社員が勤務していますが、社員一人ひとりが最大限の可能性を引き出せる環境を整えるには、DE&Iの実現が必須です。男女のジェンダーだけでなく、国籍や障がいの有無、LGBTQ+などいろんな側面をトータルで鑑み、異なるバックグラウンドや価値観を持っている人たちが集まることによって、新しい価値や強みを出せると信じています」(キン)

BATジャパン 執行役員 人事&インクルージョン責任者  兼 BAT 北東アジアエリア 人事&インクルージョン・ディレクターのキン・ヨンシン

BATジャパン 執行役員 人事&インクルージョン責任者 兼 BAT 北東アジアエリア 人事&インクルージョン・ディレクターのキン・ヨンシン


実際に文化や慣習が異なる国で働いた経験を持つマクラムは組織が多様性を取り入れ、ビジネスチャンスを生み出すことを体験している。

「たとえば南アフリカで得た成果を、他の地域のマーケットで展開したり掛け合わせたりすることでビジネスチャンスが生まれたこともあります。また人材育成の領域でも、他地域で得た知見が、新たな赴任地で生かされることも。さまざまな文化や人と交流したことが、私のキャリアの礎となりますし、それをチームのスタッフに還元できるのです」

BATジャパンにとって、マクラムというロールモデルが身近に現れた価値は非常に大きいという。仕事もプライベートも自分が叶えたい環境を求めることは可能で、会社はそれを支援することを、彼女の存在が証明している。

「一方で社員もただ環境の整備を待っているのではなく、自分自身が主体となってキャリアを積み重ねていく必要があります。その意味でも男女問わずさまざまな社員にとって、マリエルは素晴らしい見本です。また、今後我々がDE&Iという戦略で日本に貢献できるとすれば、世界で戦える次世代のリーダーを育成・輩出すること。例えば、若い社員が日本にいながら、マリエルのようなグローバルの第一線にいるリーダーのもとで経験を積むことができる。得られる知見は大きいはずです。企業の成長とともに次世代のリーダーを生み出すことが、我々の一番大きなミッションだと考えています」(キン)

※1 2023年9月時点
※2 帝国データバンク『女性登用に対する企業の意識調査(2023年)』

BATジャパン
https://www.batj.com/

マリエル・マクラム◎BATジャパン 副社長 マーケティング責任者 兼 BAT 北東アジアエリア マーケティング・ディレクター

キン・ヨンシン◎BATジャパン 執行役員 人事&インクルージョン責任者 兼 BAT 北東アジアエリア 人事&インクルージョン・ディレクター

Promoted by BAT Japan / text by Yuri Yano / photographs by Aiko Suzuki / edited by Kaori Saeki