食&酒

2024.01.01 14:00

良い料理人に愛されるということ|三澤世奈×小山薫堂スペシャル対談(前編)

Forbes JAPAN編集部

江戸切子と薩摩切子の違いとは?

小山:切子というと江戸切子と薩摩切子が有名ですが、江戸切子ならではの強みは何ですか?

三澤:「使い手」に合わせて進化しているところでしょうか。江戸切子はもともと江戸の町民文化的に発展したもので、人々の生活の発展に合わせ、シンプルな文様から、大正時代にはモダンな印象のもの、昭和・平成には細かな文様の入った、より装飾的なものへと変化しています。現在もデザインや色の指定がなく、自由度が高い。そこが私も魅力と感じる由縁です。

小山:いま、伝統工芸の継承者がどんどん少なくなっていますよね。

三澤:ええ。江戸切子も上の世代が一挙に引退したので、100人前後が80人台まで減りました。堀口切子に限らず、常にSNSを更新するなど、門戸を開く努力はどこの工房もされていると思います。

小山:就業されてる方は、みな独立を夢見ているんですか。飲食業ではスタンダードなことだけど。

三澤:独立前提で入る方がいるというのはちらほら聞きますね。それはとても健全なことだし、技術を継承・発展させるためには大切なスタンスかと私も思います。

小山:センスのある料理屋さんって、美味しい料理だけでなく、カトラリーや食器、空間を含めたライフスタイルを提案してくれるじゃないですか。三澤さんの切子を置いている料理屋さんはありますか。

三澤:神戸の「料理屋 植むら」さんや、群山の「Chez Hirakawa RESTAURANT」さんなどに置かせていただいています。

小山:良い料理人に作品が愛されるというのは、作家の一つの価値になると思います。ぜひblankにもひとつ!(笑)

今月の一皿


ゲストの思い出の料理は東京・茅場町「caveman」のサラダ。見た目は斬新だが食べやすい味でホッとしたとのこと。

blank


都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。


三澤世奈◎1989年、群馬県生まれ。江戸切子職人。2012年、明治大学 商学部卒業。14年に堀口切子に入社。19年より、同社においてブランド「SENA MISAWA」をプロデュース。「日常空間に心地よい切子」をテーマに自らの切子を追い求め、日々技を磨く。

小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。

写真=金 洋秀

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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