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2024.01.13

鎌倉で日本文化体験。メタバースデザイン責任者が通う理由

(左)岸 信之 岸家 代表取締役 &(右) IAN SPALTER Meta メタバースデザインディレクター

鎌倉で文化体験型宿泊施設「Modern Ryokan kishi-ke(モダン旅館 岸家)」を手がける岸信之と、メタバースのデザイン責任者を務めるイアン・スパルター。日本文化に造詣の深い2人がその効用について語り合った。「エグゼクティブ異種交友録」の連載第20回をお届けする。


日本文化には心の平穏をもたらす効用がある。それを体験できる場を岸家で提供しています。

岸 信之(岸家 代表取締役):半導体を扱う商社で営業の仕事をしていたころ、多くの一流と言われる外国人ビジネスマンと出会いました。生き馬の目を抜く業界で常に結果を求められるため、緊張感に晒され解雇への不安も大きい。そんな彼らにはマインドフルネスや心の充足につながる体験が必要だと考えていました。
さまざまな文化体験やお茶、精進料理などを提供する和室。カウンター越しには相模湾が広がる。

さまざまな文化体験やお茶、精進料理などを提供する和室。カウンター越しには相模湾が広がる。

武家の流れをくむ家に生まれた私は、幼少期から祖父に禅宗の「知足(足るを知る)」という考え方を学び、祖父がいれてくれた玉露を飲みながら会話をする時間と空間に心を癒やされた経験があり、日本文化には心の平穏に寄与できることがあると考えて、鎌倉で一棟貸しの宿「岸家」を立ち上げたんです。日本が培ってきた独自の文化は、海外のエグゼクティブ層にも喜ばれ、人的資源も天然資源も足りない日本がサバイブするための貴重な資源にもなりうるでしょう。
岸の祖父が住んでいた目黒の武家屋敷。「岸家」の建築には木材や骨董品などを再利用している。

岸の祖父が住んでいた目黒の武家屋敷。「岸家」の建築には木材や骨董品などを再利用している。

岸家では「知足」を拡大解釈し、茶道や生け花、精進料理等の体験コースや和の空間を用意。集中して心を落ち着け、今ここにある大切なことに気づき、未来への活力を生む場を提供しています。イアンも家族で滞在し、子どもたちもキッズ知足体験コースに参加してくれました。トップクリエイターである彼が、当館だけでなく日本文化を認めてくれたことがとてもうれしく、誇らしい気持ちです。
きし・のぶゆき◎1984年、東京都生まれ。武家の流れをくむ岸家16代目当主。上智大学在学中にセント・ボナベンチャー大学に交換留学。2011年に半導体商社に入社。19年に鎌倉で、日本文化体験を提供する「Modern Ryokan kishi-ke」を開業。

きし・のぶゆき◎1984年、東京都生まれ。武家の流れをくむ岸家16代目当主。上智大学在学中にセント・ボナベンチャー大学に交換留学。2011年に半導体商社に入社。19年に鎌倉で、日本文化体験を提供する「Modern Ryokan kishi-ke」を開業。

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文=松下久美 写真=若原瑞昌 撮影協力=モダン旅館 岸家

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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