この1年を振り返りつつ、2024年の「ガチ中華」の新しいシーンを予測してみたい。
新宿歌舞伎町では火鍋店の多くが閉店
まず新宿から。10年ほど前に外国人観光客で繁盛していた「ロボットレストラン」が「侍レストラン」に生まれ変わって新たな集客を始めていた。「新宿西口思い出横丁」には外国客があふれ、飲食店の英語表示が再び現れるなど、インバウンドの町、新宿らしさを感じた。1点気がついたのは、かつて「本格四川火鍋の開店ラッシュ」が起きていた歌舞伎町界隈の火鍋店の多くが閉店していたことだ。
2021年6月に書いたコラム「都内で新感覚の中華料理店が急増中『東京ディープチャイナ』の味わいかた」で挙げていた10店(「譚鴨血老火鍋」「小龍坎老火鍋」「小肥羊」「海底撈火鍋」「澣花火鍋」「蜀一火鍋」「大重慶麻辣燙」「三巴湯火鍋」「天香回味 HUTAN」「麻辣王豆腐」)のうち、「小龍坎老火鍋」「澣花火鍋」「蜀一火鍋」「三巴湯火鍋」「天香回味 HUTAN」の5店、つまり半分がなくなっていた。
昨今の麻辣(マーラー)ブームの広がりはあるものの、一般の日本人には辛さと痺れが尋常ではない本場の四川火鍋は、広く支持されなかったのかもしれない。そもそも新宿に限らず、都内に中華火鍋店が増えすぎたからではないかと思う。
調理人が必要でなく、オペレーションも簡単な火鍋業態は出店しやすいので、一時期、店は急増したが、ここまで増えると集客が難しいのだろう。コロナ禍前の2019年に959万4300人と訪日外国人観光客数の3分の1を占めた中国客が今年は23.8パーセント(日本政府観光局JNTO調べ)と4分の1も戻っていないことも、特に新宿の場合は影響していそうだ。
池袋西口界隈は、都内で「ガチ中華」の店が最も多く密集しているとされるが 、特に中国系の現地風の看板やネオンサインがいたるところで見られる。ところが、最近、売上減に悩むオーナーたちの声がよく聞かれる。彼ら自身も池袋に同業店が増えすぎたと感じており、過当競争が起きているからだ。
それでも、新しい店が続々とオープンしているのは驚くばかりである。その一方、閉店も増え、入れ替わりが激しくなっているようだ。