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2015.07.15

「グロースハッカー」が地方を変える 福岡で400名のクリエイターが参加 

Kaizen Platform CEO 須藤憲司氏(Courtesy Kaizen Platform)

「グロースハッカー」――そんな聞きなれない言葉が今、これからのウェブマーケティングにおける重要なキーワードとして浮上している。グロースハッカー(Growth Hacker)とは成長を意味するグロースと“改善を加える人”という意味のハッカーを組み合わせた新語。

米国ではオプティマイザー(Optimizer)とも呼ばれるグロースハッカーは、2012年の米大統領選挙がルーツとされる。当時、共和党のミット・ロムニー陣営は、ウェブ上の献金集めキャンペーンのため、IT業界でグロースハックの実績のある人物を招き入れ、ABテストに代表されるサイト改善施策を実施。その結果、総額1億8000万ドル(約220億円)に及ぶ資金集めに成功した。

その潮流にいち早く注目した日本のスタートアップ企業がKaizenPlatformだ。2013年6月に元リクルートの須藤憲司氏らが「世界をKAIZEN(改善)する」をスローガンに創業した同社は、翌年にWEBサービスのUI改善を簡単に実現できるプラットフォームを公開。現在ではヤフーやJAL、ネスレ、リクルートなど120社以上、約3000アカウントで利用されている。



このプラットフォームを用いたUI改善の流れを簡単に説明しよう。サイトの改善を希望するクライアントはまず、自サイトにKaizen Platformが発行するJavaScriptのコードの埋め込みを行う。次に、Kaizen Platformのグロースハッカーネットワークに登録したクリエイターらが、UIデザインの改善案を提案する。既存のUIデザインとABテストを行い、コンバージョンレートやクリック率が改善されて、初めて費用が支払われる仕組みだ。

ネットワークにつながっていれば、場所を問わず仕事ができるグロースハッカーは、ウェブを通じた新しいワークスタイルとしても注目を集めている。現在、Kaizen Platformに参加するグロースハッカーは全国で約2100名(2015年7月時点)。同社は昨年から福岡の起業家らが集結する「福岡スタートアップカフェ」で定期的にイベントを開催。現状、Kaizen Platformのグロースハッカーのうち、約400名が福岡からだという。

「福岡に居ても東京の大手企業の案件がネットワークから受注できる。自分がやった施策が、どのような結果を出せたか、数値で把握できるのでモチベーションを高めつつ業務に取り組めます」と語るのは福岡市内でウェブ製作会社を運営する都甲守啓さん(30歳)。昨年10月からKaizen Platformに参加している。

「私は以前、楽器店に勤務していましたが、商品をただ置いておくだけでは売れないのはリアル店舗もウェブも同じこと。今後、大きな成長が期待できるEコマースの現場でスキルを磨けるのは魅力的。大手の商材の場合、ボタンの配置の変更などのちょっとした施策が、年間億単位の売上の差を生み出すこともあり、非常に刺激的です」

「大手のサイトに個人が直接関われるのは斬新」と語る都甲守啓さん
「大手のサイトに個人が直接関われるのは斬新」と語る都甲守啓さん

地元福岡で10年近くウェブ製作を手がける若田みきさんも、このプラットフォームの可能性に早くから着目した一人。
「制作物を納品して終わり、というのではなく具体的な成果が数字としてフィードバックされる。私の場合はこれまで培ったコーディングの技術を投入し、サイトの反応スピードを向上させ、検索順位を上げるといった取り組みも行っています。現状で案件の約半分はスマホに絡むものですが、デバイスごとに最適なUIを実現するといったレベルの高い仕事に関わることも多く、意欲を持って取り組めます」

「好きな時間に仕事が出来るのは嬉しい」と話す若田みきさん
「好きな時間に仕事が出来るのは嬉しい」と話す若田みきさん


Kaizen Platformは既に福岡市内のIT企業11社と提携し、地元のクリエイティブ人材の育成に務めている。同社の福岡プロジェクトを率いる蔵保萌子さんによると、「福岡は元々、IT関連の人材が集積しており、優秀な人材が豊富。クリエイティブ人材の東京一極集中を打破する拠点として魅力的です。さらに、アジアの玄関口としても知られる福岡は、今後グローバルに事業を展開していく上でも重要拠点です」とのこと。

「子を持つ母親たちもスキルを活かせる場にしたい」(蔵保萌子さん)
「子を持つ母親たちもスキルを活かせる場にしたい」(蔵保萌子さん)

今年2月に発表された「日本グロースハッカー大賞」では受賞者10名のうち3名が福岡から選出。地方に居ながら年収1000万円ベースを実現するグロースハッカーが出現したこともメディアの大きな注目を集めた。

「日本グロースハッカー大賞」
「日本グロースハッカー大賞」

さらに、今年5月からは『Growth Hack for Women』というプロジェクトを発足。リクルートジョブズとともに、福岡のNPO法人であるママワーク研究所やデジタルハリウッド福岡校と連携し、女性のグロースハッカーを100名以上増やすことを目標としている。
前出の蔵保さん自身も「女性の立場から時間や場所に縛られない自由な働き方を推進していきたいという思いがある」とのこと。

「弊社の場合、東京オフィスが新宿にありますが、リモート勤務やテレワークが常態化しており、数十名いる社員がほぼ全員顔を合わせるのは金曜日に行われる“朝会”のみ。この朝会もリモートで参加可能です。従来の雇用環境では力を発揮できなかった子供を持つ女性の方にも、スキルを活かして働ける場を提供していきたいと思っています。現状は東京の企業の案件を福岡の方にお願いするパターンが主ですが、今後は福岡の企業の案件を地元のグロースハッカーが請け負う流れも強化していきたい」

福岡スタートアップカフェでコンシェルジュを務める藤見哲郎氏によると、

「昨年10月のカフェのオープン以来、起業家らの間で福岡の存在感は飛躍的に高まった。リスクをとって創業にチャレンジする人が増えた結果、地元の金融公庫の創業支援融資金額は2014年度の数字で約36億円にのぼり、583社が誕生した。福岡は元々、女性の起業率も高い都市ですが、Kaizen Platformとの取り組みで、その流れがさらに加速することを期待しています。福岡では地元の高齢者が手作りの下駄を販売するなど、ハンドメイド市場も活性化している。今後はそういった分野との相乗効果も見込めます」とのこと。

「最近は他の都市から福岡に来て起業する人も増えた」(藤見哲郎さん)
「最近は他の都市から福岡に来て起業する人も増えた」(藤見哲郎さん)

福岡市内の繁華街、天神にある交流スペース「スタートアップカフェ」
福岡市内の繁華街、天神にある交流スペース「スタートアップカフェ」

ウェブを通じたワークスタイルの多様化は今や、都市と地方の関係を変え、新たな雇用機会を創出するパワーの源泉としても期待を集めている。

取材・文=上田裕資 写真=伊藤勇

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