アドビ、Figmaの買収を断念 欧州規制当局の承認見込めず

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米Adobe(アドビ)は現地時間12月18日、欧州連合(EU)と英国の独占禁止法規制当局からの承認が得られそうもないことを理由に、以前から計画していたデザインコラボレーションツールを手掛ける米Figma(フィグマ)の200億ドル(約2.9兆円)規模の買収を断念すると発表した。

両社の声明によると、アドビとフィグマは、EUの執行機関である欧州委員会と英国の競争・市場庁(CMA)から、買収に必要な承認が得られないと判断し、合併契約の解消を決めたという。

これに先立ち、英CMAは同日、アドビが規制上の懸念を解決するための救済策を提案しなかったと指摘。これに対し、アドビのシャンタヌ・ナラヤンCEOは、「当社とフィグマは、当局の調査結果に同意しないが、独立して前進することがそれぞれの最善の利益になると確信している」と述べた。

提出書類によると、アドビはフィグマに10億ドル(約1400億円)の契約解除料を支払うという。アドビの株価は、この発表を受けて約1.4%上昇した。

アドビは2022年9月、クラウドベースのデザインプラットフォームであるフィグマを200億ドルの現金と株式で買収すると発表した。アドビは、「働き方の未来」を象徴するフィグマが同社に加わることで「とてつもない機会」が開けると述べていた。しかし、この買収は規制当局から批判され、投資家はアドビの経営陣が、以前に100億ドルと評価されていたフィグマを過大に評価していると非難した。

英CMAは11月、この買収が英国のデジタルデザイン業界に損害を与え、「競争を排除」し、「イノベーションを減少」させると指摘した。米ニュースメディアのPolitico(ポリティコ)によると、両社は先週、米国の規制当局の承認を得るために司法省の幹部と面談していたという。

アドビの株価は、フィグマの買収を発表した直後に急落した。ロイターは当時、アドビが300億ドル(約4.3兆円)の時価総額を失ったと報じていた。

フォーブスは、フィグマの共同創業者で「世界を変える30歳未満30人」に選出されたことがあるディラン・フィールドとエヴァン・ウォレスが、アドビによる買収が成立した場合、ビリオネアになると試算していた。2人は同社の10%の株式をそれぞれ保有しており、その価値は約20億ドル(約2900億円)に達するはずだった。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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