アジア

2023.12.19 11:30

香港の民主派新聞「リンゴ日報」創業者の裁判開始 英米政府から非難の声

ジミー・ライ(Photo by Dickson Lee/South China Morning Post via Getty Images)

ジミー・ライ(Photo by Dickson Lee/South China Morning Post via Getty Images)

現在は廃刊となった香港の民主派新聞『リンゴ日報(アップル・デイリー)』の創業者、黎智英(ジミー・ライ)が12月18日に出廷し、ついに国家安全保障裁判が始まった。

現在76歳のライは、2019年に香港で起きた民主化デモの著名な支持者として知られたが、外国勢力と共謀し、国家安全に危害を加えたとして、香港国家安全維持法(国安法)違反の罪に問われている。有罪となれば、最高で終身刑を科されることになる。

陪審員なしで3人の裁判官によって審理される裁判は、約80日間続くと予想されている。18日、裁判所の周囲には警察の厳重な警備体制が敷かれ、傍聴のために徹夜で並んだ一般市民の姿もあった。

裁判に先立ち、英国のキャメロン外相はライの釈放を求め、彼の出版活動の禁止は、表現と結社の自由による権利の平和的行使を明らかに阻止しようとするものだと述べた。米国務省のマシュー・ミラー報道官も当局がライを起訴したことを非難し、香港当局が報道の自由を尊重するよう要請した。

ライは、香港で今も続く当局による反体制派弾圧の最も著名なターゲットのひとりだ。当地ではこれまでに数多くの民主化運動の活動家や政治家が投獄されたり、亡命を余儀なくされたりしている。2020年12月から身柄を拘束されているライは、政府系機関から借り受けたオフィスを目的外に使用したとされる詐欺罪で、すでに約6年の刑に服している。

中国の広州市で生まれたライは12歳で香港に密入国し、衣料品工場に勤務した後に、アジア全域で店舗網を展開するアパレルブランド「ジョルダーノ」を共同創業したことでも知られている。彼は、2008年にフォーブスの「香港の富豪40人」の仲間入りを果たしたが、その2年後にはリストから外れていた。

ライが政治に関心を持ったのは、1989年の天安門事件がきっかけだった。彼は1995年にアップル・デイリーを創刊した直後から、香港政府と中国共産党の両方を声高に批判した。このリベラルな新聞は、ライと数人のスタッフが逮捕され、その資産が当局によって凍結された後、2021年に廃刊に追い込まれた。

注目を集めるライの裁判は、香港の当局が政治的な反対意見を抑圧し続ける中で行われることになる。香港警察は先週、国安法違反の指名手配リストに、海外在住の民主活動家ら5人を追加し、逮捕につながる情報の提供者には1人当たり100万香港ドル(約1800万円)の報奨金を提供すると発表した。国外にいる指名手配中の活動家の数は13人となり、米英の政府は非難の声を上げている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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