だが、そうした恐怖を感じるとき、私たちの脳内では何が起こっているのかと、疑問に思ったことはないだろうか? あるいは、なぜ多くの人が、恐ろしい経験をすることや恐怖感を持つことに魅力を感じるのだろうかと、不思議に思ったことはないだろうか?
実のところ、恐怖には人によって異なる複雑な心理学的要素がある。また、恐怖は激しい感情であり、それが一部の人たちに、スリルや興奮をもたらしている。バンジージャンプに挑戦したり、ホラー映画を見たりすることは、私たちに刺激を与え、アドレナリンを放出させる。
「怖い」とき、体に起きていることとは?
まず、私たちがいずれかの感覚器官を通じて潜在的な脅威を察知したとき(例えばヘビを見た、大きな音を聞いた、異臭を感じたなど)、それらに対する初期反応として恐怖心がもたらされる。そうした感覚(知覚)情報はまず、脳の視床に伝えられる。視床は感覚器官からもたらされたデータを脳のその他の領域に中継する役割を担っている。
次に、恐怖などの感情を処理する上で中心的な役割を果たす扁桃体が、視床から送られたデータを瞬時に分析し、それが脅威であるかどうか判断する。
脅威を知覚すると、扁桃体は視床下部を活性化させ、ストレスホルモンであるアドレナリンやコルチゾールなどを放出させる。これらのホルモンは心拍数を増加させ、瞳孔を開き、筋肉への血流量を増やし、体を「戦うか、逃げるか、固まるかの反応」に備えた状態にする。
そして、自立神経系のうちの交感神経系が、恐怖に対する生理学的反応を活性化する。そうした反応には、警戒感が強まることに加え、発汗や反射神経の亢進などが含まれる。こうした自動的に起きる反応の一方で、同時に脳は自らが置かれている状況の評価を続け、取るべき適切な行動について決定を下す。