経済・社会

2023.12.20 07:30

レーダー照射事件から5年、金正恩暗殺工作との関係を指摘する元情報部員

(VDCM image / Shutterstock.com)

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12月20日、韓国海軍艦艇による海上自衛隊機への火器管制レーダー照射事件の発生から5年を迎えた。この事件は、改善が進む日韓関係のなかで残された課題の一つでもある。すでに陸上自衛隊は韓国陸軍と、航空自衛隊は韓国空軍と、それぞれ2国間での防衛交流を再開している。海自の護衛艦「はまぎり」も5月、釜山に入港したが、あくまで多国間海上訓練への参加の一環という名目だった。海自幹部らは「レーダー事件が解決しない限り、韓国海軍との2国間交流は再開できない」と訴えている。事件から5年経つ今も、韓国による真相究明や再発防止、事件への謝罪などは済んでいない。

この事件当時、海自関係者らが首をかしげた疑問の一つが、韓国海軍駆逐艦「広開土王」がなぜ、能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)まで出張ってきたのか、という事実だった。韓国軍は通常、米韓連合軍が設定した「KTO(Korean Theater of Operation)」と呼ばれる作戦区域内で活動する。広開土王の行動は、何か特別の理由が伴うと、当時から推測されていた。

当時、問題の海域にいたのは、広開土王と韓国海洋警察庁の警備救難艦、そして北朝鮮の木造船だった。一瞥すると、遭難した北朝鮮の木造船を救うために、広開土王と警備救難艦が急行したという図式に見えた。ただ、北朝鮮の船は国際チャンネルを利用した救難信号を出していなかった。「なぜ、そこに北朝鮮の船がいることを、韓国側は知ったのか」「なぜ、軍艦まで出動させる騒ぎになったのか」というのが、解けない謎として残っていた。当時、取材した韓国軍関係者は「北朝鮮の船を目撃した韓国漁船の通報で知った」と説明していた。

韓国の情報機関、国家安全企画部(現・国家情報院)で1993年から2000年まで勤務し、現在は米ペンシルベニア州に住む金基三弁護士は「あの事件は、金正恩(朝鮮労働党総書記)暗殺工作と関係がある」と語る。金基三氏が国情院の元同僚や北朝鮮事情に詳しい関係者らから得た証言によれば、2017年5月に誕生した文在寅政権は北朝鮮との対話路線を進めていた。特に、大統領府の高官が常に北朝鮮と連絡を取り合っていた。金氏は親密な関係の背景の一つとして「高官は文政権発足前、民間人だった時期に独自に得た情報から、金正恩暗殺工作の動きを知り、北朝鮮に漏らした疑いが持たれている」と語る。
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文=牧野愛博

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