経済・社会

2023.12.20 07:30

レーダー照射事件から5年、金正恩暗殺工作との関係を指摘する元情報部員

金氏によれば、レーダー照射事件当時、北朝鮮の木造船には4人が乗っていた。金氏は「金正恩暗殺工作に関わった残党の可能性もあったため、北朝鮮が行方を血眼で追っていた」とも語る。ただ、韓国側は4人を「救助」した翌日には、調査を行わずに北朝鮮側に引き渡したため、4人がどういう人物だったのかを確認する術はないという。「広開土王の艦長は青瓦台のオーダーのため、必死になっていた。そこに日本の哨戒機が現れたため、興奮して火器管制レーダーを照射したのかもしれない」という。

いささか、突拍子もない話にも聞こえるが、韓国は当時、広開土王艦長を日本側に接触させなかったのも事実だ。「軍事機密を知られたくないというのであれば、日韓双方がレーダー照射に関するデータを米軍に提供して、客観的に判断してもらおう」という日本の提案も受け入れなかった。すでに広開土王のレーダーも取り換えられてしまったかもしれない。当時の記録を一切、表に出さないために、ますます「出せない事情があるのか」という疑惑と好奇心を呼ぶ悪循環に陥っている。

北朝鮮は18日、日本海に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。日米韓は19日、北朝鮮のミサイル発射情報をリアルタイムで共有するシステムの運用を開始したと発表した。ただ、現実的には海自のイージス艦が日本海できちんとした位置取りさえできていれば、ほぼ日米だけで北朝鮮のミサイルの行方を追跡できる。日韓で重要なのは、ミサイル情報共有というシステムを皮切りに、信頼を重ねて、一緒に作戦行動ができる関係をつくることだろう。

12月に日本で行われた日米の大規模な指揮所演習「ヤマサクラ」に、オーストラリア軍が初めて参加した。フィリピン軍もオブザーバーで参加したが、そこには韓国軍や在韓米軍の姿はなかった。ロシアと中国、北朝鮮が接近している今日、日本を防衛する演習は、東アジアで同時に様々な危機が多発する「複合事態」を想定したものでなければいけないはずだ。在韓米軍や韓国軍がいなければ、十分な演習は難しい。

レーダー照射事件から5年が経つ今こそ、韓国は真相を明らかにし、尹錫悦政権が強調する日米韓の安全保障協力を更に強化する環境を整えるべきだろう。

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文=牧野愛博

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