海外

2023.12.31 11:30

「シリコンバレー」を日本でつくるには スタンフォード前学長に聞く

最も難しく、価値があるのは、チームを率いる人材の層を作ることです。CTOやCEOなどCXOになるための適切な経験を積んでいる人を集めることが壁になります。

例えば、起業家が会社を作ろうとして、シスコシステムズにいる中の一人を捕まえて、「君にCEOになってほしい」と言います。新しい会社はこのようにして生まれ、シリコンバレーでは常にこのようなことが起こっているのです。ただ、このようなマネジメントレイヤーの人材プールを構築することは、最も再現するのが難しいことなのです。

──CEOなどの候補になる人材はどこにでもいるわけではありませんよね。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、あるいはミシガン大学など、米国中心部にある2つの素晴らしい公立大学を例に取りましょう。そこからはいくつかのスタートアップも生まれていますが、技術者や経営層、CEOなどの人材が大量にいるわけではなく、アーバナ・シャンペーンに住みたいわけでもありません。事業を飛躍させるうえで肝心な時になると、シリコンバレーに移っていきます。

──シリコンバレーが世界でも特殊な環境だとすれば、日本はどのようにイノベーションに向き合えばよいのでしょうか。 

必ずしも日本が、シリコンバレーのように自由奔放である必要はないと思います。バランスを取る必要がある。イギリスでは起業家精神が高まるにつれて、労働規制なども緩和されてきています。日本も時間とともにどのように進化していくかを見極めることが、重要な鍵になると思います。

インタビュー=熊平智伸、高梨遼太朗、芦澤美智子 文=芦澤美智子 撮影=高梨良子 編集=露原直人

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