アジア

2023.12.18 15:00

中国AI企業「センスタイム」の共同創業者が死去

日下部博一

Shutterstock.com

香港市場に上場する中国の人工知能(AI)テクノロジー企業、センスタイム(商湯科技)は12月16日、創業者でビリオネアの湯曉鴎(タン・シャオオウ)が15日に病気のために死去したと発表した。55歳だった。

香港中文大学の情報工学教授でもあったタンの直近の保有資産を、フォーブスは11億ドル(約1560億円)と試算している。2022年の「香港の富豪50人」ランキングに保有資産60億ドルで16位にランクインした彼は、2月に発表された最新のランキングでは、25億ドルで33位に後退していた。タンの資産は、保有するセンスタイムの株式の価値に基づき試算されている。

1996年にマサチューセッツ工科大学でコンピュータービジョンの博士号を取得したタンは、香港中文大学で教授を務めていた2014年に、博士課程の学生だった現CEOで会長の徐立(シュー・リー)らと共にセンスタイムを共同創業した。

約10年の歴史を持つセンスタイムはこれまで多くの困難に直面してきた。2019年には米国の禁輸リストに追加され、米国からの供給や技術へのアクセス制限を受けた。米国はまた、2021年に同社を投資の禁止対象に指定していた。

センスタイムは、2021年12月に香港市場に上場したが、成長見通しが鈍化する中、株価の下落が続いている。2023年上半期の同社の売上高は前年同期比1.3%増の約2億200万ドル(約287億円)で、損失は4億4380万ドル(約631億円)だった。

センスタイムは近年、AIベースのソフトウェアと分析ツールで新規顧客を獲得したが、自動車部門や政府関連などの既存顧客からの収益が急減したため、成長は相殺された。同社の初期の出資者である中国の電子商取引大手アリババと日本のテック投資大手ソフトバンクも出資比率を引き下げている。

センスタイムは最近、空売り投資家からの攻撃にも直面している。米国のGrizzly Research(グリズリー・リサーチ)は11月の報告書で、同社が売上高を水増しし、「ラウンドトリッピング」と呼ばれる不正なスキームを用いていると主張した。センスタイムは、この主張が根拠を欠くもので、誤解を招く結論や解釈が含まれていると反論したが、同社の株価は年初から40%以上、IPO以来では80%近く急落している。

タンの私生活については、あまり知られていない。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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