日本ラグビーの育成強化と普及、リーグの事業性・社会性向上などを目指して2022年に発足し、3季目を迎えた今シーズンは、ワールドカップ2023フランス大会で活躍したばかりの日本代表選手たち、そして海外のスタープレイヤーも多く参戦するとあって、盛り上がりを見せています。
今年のW杯で、前回2019年日本大会での史上初ベスト8を超える活躍が期待された日本代表・ブレイブブロッサムズは、2勝をあげながらも強豪イングランド、アルゼンチンに屈し、残念ながら決勝トーナメントを逃しました。
次の2027年オーストラリア大会に向け、ヘッドコーチに2015年イングランド大会で強豪南アフリカ戦を含む歴史的3勝に導いたエディー・ジョーンズ氏の復帰が決まり、「まずはトップ8」との目標に向けてさらなる強化に挑んでいくことになります。
そうした4年間の第一歩となる今シーズンならではのリーグワンの見どころや、今後の日本代表の飛躍の鍵になるであろうポイントや課題、世界のトレンドについて、ラグビー日本代表チームの現役アナリストである浜野俊平氏が、W杯でのデータ分析をもとにお届けします。
W杯データで見る、リーグワン参戦・海外スタープレーヤーの凄さ
見どころ満載の今シーズンのリーグワンですが、まずは海外選手についてから挙げてみたいと思います。今年のW杯で大活躍した、本当に現役バリバリの素晴らしいスター選手たちが多く参戦しています。例えば、コベルコ神戸スティーラーズのアーディ・サベア選手(ニュージーランド)は、フランス大会で「一番ボールキャリーをした選手」です。世界のトップ中のトップがプレーするW杯でボールキャリーが一番多いというのは、特別なことです。サベア選手はワールドラグビーが選ぶ最優秀選手にも選ばれていますが、それに相応しいスタッツが出ていました。
ボールキャリー以外でも、各プレー指標のトップ選手たちが日本に来ています。
◆スポーツデータ提供会社のOpta用語で言うところの「ドミナントタックル(相手を圧倒したタックル)」1位:埼玉パナソニックワイルドナイツのダミアン・デアレンデ選手(南アフリカ)
◆ブレークダウンで相手のボールを奪い返す「ジャッカル回数」1位:静岡ブルーレヴズのクワッガ・スミス選手(南アフリカ)
◆タックルされた後にボールをつなぐ「オフロードパス回数」1位:静岡ブルーレヴズのチャールズ・ピウタウ選手(ニュージーランド)
◆「ラインアウトのスチール回数」1位:今年コベルコ神戸スティーラーズに復帰したブロディー・レタリック選手(ニュージーランド)
そして、後ほど述べますが、今後の日本代表チームの鍵となる「キック」の名手たちも揃います。
◆キック回数2位(ボールキャリーも3位!):トヨタヴェルブリッツのボーデン・バレット選手(ニュージーランド)
◆同4位:今年から東芝ブレイブルーパス東京に加入したリッチー・モウンガ選手(ニュージーランド)
◆同8位:横浜キヤノンイーグルスのファフ・デクラーク選手(南アフリカ)
世界的に優れたキッカーが加わることによって、戦術面についてもより発展していくのではないかと期待しています。
世界のトレンドと日本代表チームの現在地
もちろんこうした様々な指標においてレベルアップを目指していくわけですが、中でも特に近年「強豪国において重用されている戦術やプレー」があることが、W杯フランス大会のデータ分析からも読み取れます。日本代表選手たちの注目ポイントに話を進める前に先ず、世界的なトレンドと日本代表チームの現在地、課題について、W杯フランス大会のデータを振り返りながら、考えてみたいと思います。