治験が始まった男性用経口避妊薬「YCT-529」についてわかっていること

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世界初の非ホルモン性男性用経口避妊薬の臨床試験(治験)が、今週始まった。ホルモンを使用したこれまでの避妊薬には多くの副作用や精子産生の抑制において課題があることから、非ホルモン性薬剤は男性の避妊方法確立に向けた有望な一歩とみられている。

医薬品メーカーのYourChoice Therapeutics(ユアチョイス・セラピューティクス)は、同社が開発した毎日服用するタイプの男性用経口避妊薬「YCT-529」の第1相(フェーズ1)臨床試験を開始した。

女性用の経口避妊薬と異なり、YCT-529は非ホルモン性のレチノイン酸受容体α(RARアルファ)を使用しており、ビタミンAへの作用を阻害することで、精子産生を抑制する。ビタミンAは男性の生殖に必要な精子産生と生殖管の維持に必要な栄養素で、欠乏することで不妊を引き起こすことが過去の研究でわかっている。

雄のマウスを用いた前臨床試験では、99%の避妊効果を示した。可逆性は100%で、マウスは投薬停止から4~6週間後に生殖能力を取り戻し、副作用もなかった。

YCT-529がいつ使用できるようになるのかは、まだわからない。臨床試験は2024年6月に終了する予定だ。

学術誌Current Obstetrics and Gynecology Reportsに掲載された研究論文によると、新たな男性用避妊薬は、米国で1000万人、世界では5000万人の需要が想定でき、市場規模は400億~2000億ドル(約5兆7000億~28兆円)と見込まれる。

新薬の開発者で米研究機関Institutes for Therapeutics Discovery and Development(ITDD)創設者のグンダ・ゲオルクは声明で「世界は男性用避妊薬の準備ができている。女性が避妊用ピルの副作用に数十年間耐えてきたことを考えると、ホルモン剤を含まない製品の提供は正しいことだ」と述べた。
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翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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