米歌手ホールジー、Z世代向け化粧品ブランド成功の軌跡

米歌手のホールジー (Getty Images)

米歌手のホールジーは、変貌自在なルックスでファンを魅了している。2015年にファーストアルバム「Badlands」をリリースした直後、誰もが自分のことを青い髪のシンガーと呼ぶことに辟易したのだという。

そこで、頭をスキンヘッドにして、常にルックスを進化させることを誓った。2017年にはブロンドのピクシーカットでグラミー賞のレッドカーペットに登場。2020年の雑誌の表紙では腰まである三つ編みを披露し、2022年のLove and Power ツアのオープニングではハーフアップのブロンドカールを揺らした。

そして、2023年のフォーブス「30アンダー30サミット」に現れた29歳のホールジーは、またもや変身し、花柄のモスキーノのドレスから、胸に「I'm still growing(私はまだ成長中)」と書かれた水色のメイフェアのクルーネックを覗かせた。

2016年の30アンダー30で音楽部門に選出され、今年の30アンダー30サミットでもパフォーマンスを披露したホールジーは「このメッセージは、今の私を象徴するものだと感じている」と語る。

彼女のカメレオン的変遷の核心にあるのは、メイクアップだ。「私は自分でメイクをするし、それは必要に迫られて始めたもの。市販品にはない、自分に合うプロダクトを作りたいという強い思いがあった」と彼女は話す。

ホールジーの情熱と経験は、人気の化粧品ブランド「ハードキャンディ」を立ち上げた美容業界のベテラン、ジャンヌ・チャベスとディネ・モハジャーの2人が彼女にアプローチし、2019年に新たなメイクアップラインを立ち上げることにつながった。ホールジーのヴィーガン美容ブランド「about-face」は、2021年1月の発売以来、500万個以上の製品を売り上げる人気で、2022年には5000万ドル(約73億円)の売上高を記録したとされる。

ベストセラーのアイシャドウ「Matte Fluid Eye Paint」などで知られるabout-faceは、Z世代をターゲットにしており、ウェブサイトを通じて消費者に直接販売され、全米のUltaの店舗でも販売されている。この層にとって価格は重要で、ホールジーのメイクアップ製品は7~18ドルで販売される。それでも値段が高すぎる場合は、昨年ウォルマートと立ち上げた「af94」という安価な姉妹ラインもある。af94の商品はすべて10ドル以下だ。

コスメ業界には、セレーナ・ゴメスやヘイリー・ビーバー、カイリー・ジェンナーといった著名なセレブの起業家があふれている。しかし、今のところこの市場には十分なスペースがあるようで、2022年10月から2023年10月にかけて、ニールセンIQが調査した40のセレブリティ美容ブランドの年間売上高は10億ドルを突破し、前年から57%増加していた。一方、2022年8月から2023年8月までの米国の美容・パーソナルケア業界全体の成長率はわずか11.7%だった。

「私は若い消費者がいるスペースに関わる若さがあると同時に、自分のビジネスを効果的に運営するのに十分な年齢だし、それに必要な経験を積んでいる」とホールジーは話す。

両親は仕事のためにニュージャージー州を転々としていたため、ホールジーは高校に入学する前に9つの異なる家に住み、転校を重ねていた。引っ越しの繰り返しで、孤独を抱えた彼女を救ったのは演劇や読書、絵画、そして最終的には音楽だった。

2013年、18歳のときにニュージャージー州のホテルのパーティーでミュージシャン志望のアンソニー・リー(現在のマネジャーの一人で、フォーブスの30アンダー30に選出された)に出会ったとき、彼女は初めて自分が歌っていることを他人に打ち明けた。その年の暮れ、リーはホールジーに再会し、自身が手がけていたヨーグルトのコマーシャルで歌ってくれないかと頼んだ。その広告はうまくいかなかったが、リーと仕事をするうちに、彼女は初めての曲の「Ghost」を書き、レコーディングした。
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編集=上田裕資

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