大手会計事務所KPMGが2023年10月に発表した報告書によると、ベンチャーキャピタルからの投資は、同年9月までの3カ月間で前年比27%減の770億ドル(約11兆円)と4年ぶりの低水準となり、2021年のピークから7四半期連続で減少した。また、アジアのスタートアップの調達額は、第3四半期に前年同期比40%減の200億ドルと、より急激な減少を記録した。
シンガポールを拠点とするインシグニア・ベンチャーズ・パートナーズの創設マネージング・パートナー、インラン・タンは、今回のサミットのディスカッションで「来年はもっと悪くなる見通しだ」と述べた。
資本コストの上昇とマクロ経済の逆風を受け、投資家はスタートアップの収益性を重視し、ガバナンスにも注目するようになっている。そんな中、「投資家はスタートアップへの投資を急いでいない」とタンは言う。インシグニアは5億ドルの手元資金を確保し、投資先を吟味しているという。
「今は、資金調達が非常に難しい時期だと言える。特に今後の成長のための資金を求めるグロース・ステージのスタートアップには厳しい環境だ」と語るのは、シンガポールを拠点とする10億ドル以上の運用資産を持つジャングル・ベンチャーズのマネージング・パートナーのデビッド・ゴウディーだ。
しかし、そのような環境にもかかわらず、投資家はAIを含むいくつかの注目分野には新たな資本を注いでいる。例えば、ジャングル・ベンチャーズは、ロンドンを拠点とするモジュール式アプリの構築プラットフォームBuilder.aiが5月に実施した2億5000万ドルのシリーズDに参加した。
「AIは、過去10年間のクラウドへの移行が生産性を向上させ、コストを引き下げたのと同様に、業界全体の効率化とコストの最適化を促進するのに役立つだろう」とゴウディーは指摘する。
一方、AIに投資する投資家はある程度の注意を払うべきだと、シンガポールを拠点とするオープンスペース・ベンチャーズの創業パートナーのヒアン・ゴーは言う。「何が本当で何が誇大広告なのかを意識する必要がある。興味深いAIアプリケーションは数多く存在するが、これらのイノベーションがどのように収益化されるかはまだ見えていない」
ゴーは、金利が上昇する中で投資家は、収益目標を再設定する必要に迫られ、慎重になっていると指摘した。「投資すべき資金はあるが、本当に素晴らしい企業に適切な規模の投資をしなければならないというプレッシャーがある」
(forbes.com 原文)