食&酒

2023.12.16

DXで醸すスパークリング日本酒はシャンパーニュを超える!?

美酒のある風景 Vol.69 IWAU 2023 SPARKLING SAKE

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は12月号(10月25日発売)より、「IWAU 2023」。米のうまみを感じさせながらも、柑橘を思わせる心地よい酸もあり、シャンパーニュにも比肩するポテンシャルがある1本だ。


「乾杯!」。目と目を合わせ、酒杯を挙げる。この後に続く美食や語らいの時間を想像し、誰もがわくわくする瞬間だ。そんなシーンにふさわしいのはやはりシャンパーニュだろうか。グラスに立ち上る美しい泡が気分を高揚させてくれるし、シュワッとしたのど越しが心地よい。爽快なキレの良さが合わせる料理をよりおいしく感じさせてくれるだろう。「乾杯の一杯といえばやはりシャンパーニュが王道。でも最近はスパークリング日本酒にも大きな可能性を感じています」

そう語るのは「銀座うかい亭」の店長でソムリエを務める藤澤浩幸。かのトランプ前米大統領も接遇したことのあるサービスの第一人者である。「と言っても、味わいのフレッシュさと深さの点からは、ついシャンパーニュを選びがちでしたが、この『IWAU 2023』には驚きました。米のうまみを感じさせながらも、柑橘を思わせる心地よい酸もあり、シャンパーニュにも比肩するポテンシャルがあるのではと思えたのです」

とは、高級日本酒ブランド「SHIROKIMONO」から今年リリースされた「IWAU2023」。この酒には味わいのほかにも語るべきチャームポイントが実に多いのだ。それはまず、製造元が歴史ある伝統的な蔵元ではなくベンチャー企業であること。

フードテックの世界で成功を収めた創業者は、米の消費量低下で疲弊する農家の問題を、醸造に代表される日本特有の発酵文化で解決できるのではと考えた。しかし、単独の酒蔵を拠点とする伝統的な生産では世界にスケールできるほどの生産量が確保できないため、採用したのは醸造家がレシピをつくり、それをデジタル化した製造工程を備えた複数の酒蔵で生産していくというファブレス方式。狙うは世界で1兆円産業といわれるシャンパーニュ市場だ。

複数の蔵でつくれば味わいや品質にブレが出そうなものだが、そこに不可欠なのがDX。どの蔵でつくっても同じ酒質になる研究を日本最大級の公的研究機関である産業技術総合研究所グループ(茨城県つくば市)と共同で進め、「日本酒を科学の力でシャンパーニュの味わいに近づけていく」......そんなプロジェクトを見据えて誕生した第1号がこの「IWAU 2023」というわけだ。

夢物語のようにも聞こえるが、この数十年の進化を考えればあながち夢とは言い切れまい。その夢を一緒に追いたくなってきた。

祝 2023 スパークリング・サケ



容量
|720ml
酒米|五百万石(59%磨き)
価格|6380円
問い合わせ|希JAPAN www.shirokimono.jp/
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写真=菅野祐二 文・構成=秋山 都

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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