英国議会は最近、オンライン上の被害を減らすためのさまざまな措置を盛り込んだオンライン安全法案(Online Safety Bill)を可決した。そのなかには、合法ポルノのパブリッシャーに対する利用者の年齢確認の義務化が含まれている。
この新たな施策の導入を任された英情報通信庁(Ofcom)は、年齢確認を行う上で効果的であると思われる施策のリストを発表した。その中には、写真付き身分証明書の提示や、年齢をデジタル形式で保存してポルノサービスと共有する「デジタルIDウォレット」と呼ばれる仕組みが含まれている。
また、顔を用いた年齢の推定も、Ofcomが推奨する方法の一つだ。顔立ちから25歳未満と判断された人に対し、二次的な身分証明書の提示を求めることを提案している。
性的嗜好が暴露される恐怖
一方、市民団体は、ポルノを視聴する人々に写真付きの身分証明書を求めることは、個人データがハッキングされたり、偽サイトが作成されてデータが盗まれたりした場合に、甚大な被害を引き起こす可能性があると指摘している。プライバシー擁護団体のThe Open Rights Group(ORG)のアビゲイル・バークは「ポルノの年齢認証ツールのデータが流出した際の被害は壊滅的で、恐喝の被害や性的嗜好の暴露による人間関係の崩壊などを引き起こす」と警告。さらに、Ofcomが既存の英国のデータ保護法に頼っていることを懸念しており、「このようなサイトが扱う膨大な量のデータを考慮すると、具体的で明確なプライバシーのルールが必要になる」と述べている。
バークはまた、英国のデータ保護機関である情報コミッショナー事務局(ICO)について、欧州で最もずさんなデータ規制当局のひとつであり、改革が急務だと主張している。「Ofcomは、年齢認証に伴う詐欺やサイバー犯罪のリスクの大幅な高まりから、個人のデータが確実に保護されるよう、より明確な基準とガイドラインを設ける必要がある」
ただし、ポルノサイトを取り締まる新たな規則が施行されるのは、まだしばらく先のことだ。Ofcomは2025年の初頭に最終的なガイダンスを発表する予定とされている。さらに、大多数が英国外でホストされているアダルトサイトを、英国がどのように取り締まるのかも定かではない。しかし、Ofcomが、年齢認証を行わないサイトをブロックするよう、英国内のプロバイダに要求する可能性はある。
(Forbes.com 原文)