2001年に卒業後、会計事務所のアーンスト・アンド・ヤング(現EY)に入社したが、ごく短期間で解雇された。大学に戻って博士号を取得することも考えたという。だがその後、趣味だった音楽で才能を発揮した彼は、『I Need A Dollar』や『The Man』『Wake Me Up』などのヒット曲でシンガーとしての地位を築くことになった。
そんな彼の科学への興味をよみがえらせたのは、2022年に新型コロナウイルスに感染したことだったという。「ワクチンを接種し、追加の接種も受けたのですが、それでも発症してしまった。そのことが原因で、この病気の解決策を見つけようと思ったのです」とブラックは言う。
当初、研究者たちに寄付をしようと思ったが、「慈善事業としてバイオテクノロジーに取り組むのは、ほとんど不可能だとすぐに気づいた」という。「規制当局と交渉するにしても、向こうは事業計画を知りたがる。この薬をどうやって商品化し、持続可能なものにするのか? もしビジネスとして持続可能でないのであれば、なぜヒトに投与する認可をあなたに与える必要があるのか? そんな具合に質問攻めに合った結果、私は慈善活動ではなく、自らが起業家になることに決めたのです」とブラックは語る。
現在バイオテクノロジー企業Major(メジャー)の最高経営責任者(CEO)を務める彼は、ヒューストン大学の研究者たちと協力して、ウイルス感染症へのアプローチを変える可能性のある化合物を開発している。新型コロナウイルスに対する斬新なアプローチとして始めたことが、今ではそれ以上のものとなった。「この会社は、複数の病気に対処するプラットフォーム企業なのです」とブラックは言う。
「気がつくと、ほとんどフルタイムでビジネスに関わっている自分がいました。今は、この会社の事業や、新たなソリューションを生み出すことに、信じられないほど熱中しています」
「私は今でも音楽を作り続けているけれど、メインの仕事としてではありません」。今は、NPOのために“音のレガシー”と呼ぶものを創作しているという。「私は、自分の音楽を人々の暮らしのサウンドトラックにしたいんです」
(forbes.com 原文)