その顔は確かにおもしろいが、エイリアンの芸術作品ではない。実際には侵食された丘だ。バイキング1号は火星探査の黎明期を代表するミッションであり、それ以来、この顔のより詳しい画像を私たちは目にしてきた。最新のものはNASAの多目的火星探査機、マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)が撮影したもので、同機は2006年以降、火星を周回している。
アリゾナ大学のMRO高解像度撮像装置(HiRISE)チームは、SNSで12月13日に最新画像を公開した。これは10月と11月に撮影した2枚の写真を組み合わせたものだ。これはアナグリフと呼ばれる立体写真で、地形の立体的特徴が強調されて見える。赤と青の3Dメガネがあれば、画像の立体感を最大限に体験できる。
発端となった画像を見てみよう。バイキング1号が撮影した上のスナップ写真をよく見てほしい。一面に黒い点がたくさんあることがわかるだろう。これらは宇宙船が画像を地球に送る際に生じたビットエラーだ。NASAは「いくつかのビットエラーが、画像中心近くの侵食された人間の顔に似た岩の上に『目』と『鼻の穴』の一部を形成し、岩石層の影が鼻と口に見える錯覚を起こさせています」と解説している。
それでもこの「顔」には抗しがたい説得力があり、無視をするには有名になりすぎた。2001年、NASAの探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーは、実際のところこの地形がいかに顔らしくないかを示すはるかに高解像度の画像を撮影した。そこには一切のビットエラーや奇妙な影もなく、でこぼこした火星の丘がうつっているだけだった。
人類は引き続き火星の画像を楽しんでいる。最近では火星探査車があらゆる種類の楽しい地形の写真を送ってきており、えぐられたアボカド型の岩や海洋生物に似た岩も見つかっている。
研究者たちはいまだに火星で生命の証拠を見つけておらず、もちろん記念碑を作る能力をもつ文明の痕跡もない。しかし、古代微生物の生命の兆候を探す研究は今も進められている。NASAの火星探査車がこの任務にあたっており、いつか火星の岩石試料を地球に持ち帰り、詳細な研究ができることをNASAは期待している。それは「火星の生命」という疑問に答える最善の努力かもしれない。
MROによる最近のこの丘の光景はあまり人間の顔に似ていないが、そこには別の生物が見えるかもしれない。「この画像にはライオンキング風の何かが見えます。あなたのためのパレイドリアです」とHiRiseチームは書いている。パレイドリアとは、たとえば雲の中で犬を見つけるようにランダムな形状の中に親しみのある物体を見つける人間の傾向をいう。
イメージを大きく膨らませれば、火星の丘にライオンのような顔が見えるかもしれない。NASAが撮影する火星の画像は、この数十年間にますます詳細になり神秘的ではなくなっているが、空想を巡らせる人間の能力は決してなくならない。
(forbes.com 原文)