全米では、日本より約1カ月遅れて、11月下旬に公開された。都市により上映のスタイルはさまざまだとは思うものの、筆者の住むラスベガスでは当初1週間の予定で上映が組まれたが、その人気ぶりから直ぐに延長された。
現在の予想で行くと、大挙してクリスマス映画が封切られる前に終了の様子なので、約20日間の上映となる。筆者の27年間の滞米生活のなかで、日本映画が20日間も連続で上映されたことは初めてのことなので、快挙に間違いない。
奇しくも、この20日間は、同じ日本映画の宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか(The Boy and the Heron)』(2023年)とロードショー公開がかち合ったのだが、もちろんこんなことも空前絶後である。
日米のゴジラとGODZILLAの融合
日本で『ゴジラ-1.0』が大絶賛をもって迎えられたのは筆者も承知はしているが、アメリカでの一般の観客たちの反響を紹介したい。まず、ネット上の映画評としてアメリカでもっとも引用される「ロッテントマト・ドットコム」では、批評家の採点が97点(満点は100点)で、一般の観客の採点に至っては98点と、異様なほどの高得点だ。
これは通常、超マイナー映画で評者の母数が少ない場合でないとほぼ達成できない高得点なのだが、『ゴジラ-1.0』は12月11日の時点で2500以上の評価数となっており、これは統計的にも十分すぎるほどの数で、この高得点はかなり信頼性が高い。
個別に筆者が現地の観たという人間に訊いてみても、やはり前作の『シン・ゴジラ』(2016年)を凌駕し、これまでのゴジラ映画で最高だという声が多く、日本での評価とも重なる。
さらにそれらの声に耳を傾けてみると、これまでハリウッドではゴジラ(GODZILLA)が登場する映画は5本つくられており、同じゴジラ映画であっても日米で別物であったが、初めて『ゴジラ-1.0』で日米の「ゴジラ」が融合されたという見方も多い。外見的にも今回のゴジラはハリウッド製GODZILLAに似てなくもない。
もともとゴジラに代表される日本の「怪獣」はアメリカでも「Kaiju」と表現されており、決して「モンスター(Monster)」ではない。Kaijuは実態や帰属や性向のよくわからない不気味な存在で、とにかくアメリカでは畏怖の対象としても扱われていた。それはスーパーヒーロー映画に登場する悪の権化のモンスターとはまったく違うし、「キングコング」などのシリーズとも異なるのだ。
また、Kaijuのようにサイズが桁外れに大きいことを、英語のスラングではゴジラを形容詞化して「ゴジリアン」と言う。アメリカを旅行して巨大なピザやハンバーガーに遭遇したら、「Wow, It’s Godzillian!」とでも言えば、店員も嬉しそうに目を細めるはずだ。