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教育

2023.12.19 07:30

日本人コーチがスタンフォード大で考えた、慶應義塾優勝とスポーツバカの「未来」

スタンフォード大アメフトチーム、Top of Topからの黄金スピーチ

筆者はここで一つのエピソードを思い出す。シリコンバレーの起源とも言われる我がスタンフォード大学のフットボールチームには、OBである多くのVIPゲストが訪ねてきてくれる。特に年間12試合あるゲームには、「Honorary Captain (名誉キャプテン)」なるポジションを必ず設けて、卒業生をチームの一員として招き入れ、試合前日から彼らと過ごすという素晴らしい習わしがある。

Microsofrでエクセルを開発した責任者、Yahooの創業者、タイガー・ウッズ、Navy SEALS (海軍特殊部隊)のキャプテン──。ありとあらゆる分野から優秀な卒業生達が後輩たちの元に訪れる。そして選手と一緒にフィールドに入場してコイントスを含め、完全にチームの一員として試合に参加するのである。

それがかけがえのない錬金術でもあることはまた別の機会にシェアするとして、その一連のイベントの中で、私が一番好きなのは、彼らのスピーチである。一緒に闘うチームメイトへのモチベーショナルスピーチなので、ただでさえ唯一無二である存在の彼らの経験から、バトルフィールドへ向かう我々に対して、闘争心が高まるような唯一無二のストーリーをシェアしてくれるのである。それぞれの分野のTop of Topから聞くストーリーは「印象に残らなかったものがない」と表現しても過言ではない。前置きが長くなったが、あるOBのスピーチの一節をシェアしたい。

「A life is hard and competitive. 人生は簡単ではないし、競争は激しい。奴ら(相手チーム)が素晴らしいアスリートで能力が高いことはわかっている、しかし彼らは将来(スタンフォードで学位を取得した)我々の下で働くことになることは明らかだ。だったら、今日の試合でそれを彼らに嫌と言うほどわからせてあげよう」

ゲーム前のモチベーションを高めるためのスピーチであるので、ことさら強調した内容であることを前提にしても、(日本人である)筆者には「なんと高い位置から、高慢ちきな言い方をする人なんだ」という印象が最初の数秒間あった。しかし、よくよく考えてみれば「おっしゃる通り」である。

資本主義社会に生きる我々にとって、幸福の度合いは別として、そこに経済的不平等が生まれることは当然である。言い方を変えればスタンフォード大学を卒業したようなエリート中のエリートに権力や富が集まるともいえよう。ここアメリカでは、日本と比べてその差が格段に大きい。日本人である筆者にとって驚きなのは、教育現場を含めアメリカの社会は、それを隠さないことである。
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編集=石井節子

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