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働き方

2023.12.30 10:00

テクノロジーの進歩で、引退という概念は「過去の遺物」に

Getty Images

「あんなことを言わなければよかった。自分がその年齢になったらどう感じるかを考えていたのだと思うが、いざこの年齢になってみると、まったく違う感覚だ」。これは、米プロフットボールリーグ(NFL)のチーム、ニューイングランド・ペイトリオッツでヘッドコーチを務めるビル・ベリチックの言葉だ。

現在71歳のベリチックが「言わなければよかった」と悔いているのは、ずいぶん前に自身が述べた「70代になるころにはコーチを引退しているだろう」という発言のことだ。

物事は変化する。そしてそれは、好ましいことだ。引退という概念がいま、われわれの目の前から消えつつある。現代の子どもたちがまだ生きているうちに、リタイアという概念は時代遅れと考えられるようになるかもしれない。ちょうど、公衆電話が「過去の遺物」になったことと同じように。

リタイアという概念が消滅しつつあるのはなぜだろうか。一つには、医療が飛躍的に進歩していることだ。

米投資家で著作家のアンディ・ケスラーがかねて記事などで取り上げている企業に、米カリフォルニア州メンローパークにあるバイオテクノロジー企業Grail(グレイル)がある。同社が開発した血液検査技術により、多数のがんを早期に検出し、悪化する前に対処することがいっそう可能になっている。ケスラーはさらに、かつては人間の命を奪っていた病気を素早く治療できる「魔法の薬(マジックピル)」の登場についても書いている。

疑ってかかるべきではない。拙著『When Politicians Panicked(政治家たちがパニックを起こすとき)』(未邦訳)でも指摘したように、19世紀、がんで死亡する米国人はほとんどいなかった。それは、当時の人たちが現代人より健康だったからではない。がんになる前に、当時の主な死因であった肺炎や結核などの病気にかかって死ぬことが多かったからだ。

そう考えると、人を死に至らしめるがんの治療を阻む唯一の障壁は「知識」だと言っても決して過言ではない。それを踏まえた上で、近ごろ急成長を遂げつつある「考える機械」について考えてみよう。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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