いまだに誰もがツイッターと呼んでいるXの本当の問題はシンプルだ。このアプリはそれほど有益ではない。長い間、新たなイノベーションがなにも導入されていなかった。
メタやXといったソーシャルメディア企業が、ミームをシェアしたり陰謀論をリツイート(失礼、Xになってから「リポスト」と変更されたのだった)したりするユーザーに課金をせまる、新たな現実が形成されつつあるなかで、Xが進むべき道はひとつしかない。
マスクが、自身の言動を反省するとは思えない。だが、ユーザーは大して気にしていないと、筆者は思う。私たちは、ニュースフィードに氾濫する、気が滅入るような投稿をスクロールして、最新の炎上案件に目を留め、無数の罵詈雑言に呆れ返るが、たいていは、そのまま素通りして日常に戻る。
こうした茶番はすべて、本質的なことからすると「雑音」でしかない。つまり、新しい製品を実際に世に送り出そうとしたり、フォロワーたちとインサイトを共有したり、テクノロジーにおけるイノベーションに乗り遅れないようにしたり、といったことを妨害する雑音でしかない。私たちはドラマにはそれほど興味がないのだ。
ソーシャルメディアの炎上はいわば、職場にいる有害な社員のようなものだ。大げさに騒ぎ、わめき散らし、長々と演説をぶつ、感情の火炎放射器のような人物に、あなたも心当たりがあるだろう。たいていの人は、このような人物が普通ではないとわかっているので、あまり気にかけない。
私たちは、騒ぎを無視することに長けている。本当の人生は、日々の仕事をこなし、家族と時間を過ごすといったことの細部にある。マスクが何をしているかについて、本気で注目している人はほとんどいない。
率直に言って、マスク自身もこのことを知っている。ここ数週間、「反ユダヤ的」発言や広告主を罵倒することで騒動を巻き起こしつつ、彼はいくつか示唆的なコメントを、(特に『ニューヨーク・タイムズ』紙のインタビューで)口にしている。彼は、結果を左右するのは大衆(彼の言葉を借りれば「地球上の人々」)だと認識している。彼がXでしばしばアンケートをとるのは、自身の最大の原動力はユーザー・エンゲージメントであるという考えの表れだ。