カリフォルニア州アラメダを拠点とするシラ社は、将来のメルセデス・ベンツのEV向けにアノード素材を供給する計画を以前に発表しており、ワシントン州モーゼスレイクに建設中の工場でパナソニック向けの材料を生産する。同社のCEOのジーン・ベルディチェフスキー(Gene Berdichevsky)は、2025年以降に開始されるこの契約の財務的な詳細については言及を避けた。
「我々の野望は、2028年にモーゼスレイクで年間100万台分のパーツを製造することであり、パナソニックの野望は、数百万台分のバッテリーを製造することだ。当社はパナソニックとともにその上限を大きく引き上げられると考えている」と、彼はフォーブスに語った。
2008年からテスラのリチウムイオン電池の主要サプライヤーであるパナソニックは、イーロン・マスク率いるテスラと共同で、ネバダ州スパークスにある北米最大のバッテリー工場ギガファクトリーを運営している。大阪に本社を置く同社はまた、他の自動車メーカーにバッテリーパックを供給するため、カンザス州にも40億ドル(約5800億円)のバッテリー工場を建設中だ。
EVや電動トラック用のセルを製造するバッテリー工場は全米に多数建設中だが、EV市場はアノードやカソード(陰極)、グラファイトなどの素材に大きく依存している。シラ社は、テスラの共同創業者のJB・ストラウベルが率いるレッドウッド・マテリアルズや、ミシガン州のONEなどの新興企業とともに、これらの必須材料の米国内の供給基盤を急拡大させようとしている。
ベルディチェフスキーによれば、シラ社が製造するシリコンベースのナノ材料は「市場で初めて実証されたグラファイトアノードを置き換える素材」だという。同社は、この素材によってEVの航続距離を20%伸ばせると見積もっており、最終的にはその倍の40%の航続距離の向上を目指している。また、充電時間を最短10分に短縮することも可能だという。
EVバッテリー用グラファイトの世界の供給を支配している中国は、バイデン政権が打ち出した新たな規則に対抗し、米国へのグラファイトの輸出を削減する意向を示している。
「テスラのモデルSのような車両は、100キロのグラファイトを用いているが、我々のテクノロジーは、それを、使い方にもよるが20キロ程度に置き換えることができる」とベルディチェフスキーは述べている。シラ社は個人投資家から9億2500万ドルを調達しており、昨年は1億ドルの政府からの補助金を獲得して、モーゼスレイクの工場を建設中だ。
(forbes.com 原文)