マイクロソフトのプレスリリースによると、米国内外の60の労働組合で構成され、1250万人が加入するアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)と同社のパートナーシップは「労働組合とテクノロジー企業がAIに焦点を当てる初めての試み」だという。
このパートナーシップを通じて、労働者とリーダーらは来年の冬から、マイクロソフトの専門家から、AIのトレンドやテクノロジーがどのように機能し開発されるのか、そして何が課題なのかについてのトレーニングを受けるという。
さらに、労働者と組合のリーダーらは、マイクロソフトのAI開発者や研究者に対して、AIを使った仕事の経験や技術に関する懸念についてフィードバックを行い、組合とマイクロソフトの間で「労働サミット」を開催する。
AFL-CIOは過去にAIについて懸念を示してきた。同団体が8月に外部に委託した調査によると、70%の回答者がAIが労働者を置き去りにすることを懸念しており、男性よりも女性の方が「AIが仕事上の不公平を悪化させる可能性」を懸念する傾向が強いことがわかっていた。
マイクロソフト副会長兼プレジデントのブラッド・スミスは、このパートナーシップを発表するイベントで「AIが決して職を奪うことはないとは言えない」と述べ、労働組合とのパートナーシップは「AIが労働者のために役立つことを保証するのに役立つ」語ったと報じられている。
一方、ハイテク労働者の間でのAIに対する懸念は低い。ピュー研究所が7月に行った調査によると、情報技術職に従事する労働者の32%が「このテクノロジーは自分たちの損になるよりも役立つ」と回答したのに対し「役立つよりも損になる」と回答したのは11%だった。
エンタメ業界に続く流れ
AFL-CIOとマイクロソフトの提携は、エンタメ業界におけるAIの使用に反発する動きに続くものと言える。ハリウッドの脚本家や俳優たちは、AIが彼らの仕事を奪うことを懸念し、数カ月にわたってストライキを行った。全米脚本家組合のストライキを終結させるための合意では、AIを脚本やリライトに使用することはできず、スタジオは脚本家にこの技術の使用を強制することはできないとされた。映画俳優組合とテレビラジオ芸術家連盟の労働組合による別のストライキは、スタジオがデジタルレプリカを作成する際に俳優またはその代理人からの同意を義務づけることと、デジタルレプリカが使用された場合にスタジオが出演者に補償することを盛り込んだ合意の後に終結していた。
AIに対する懸念は、エンタメ業界だけにとどまらない。7月に行われたピュー研究所の調査によると、米国では全労働者の約5分の1が、AIに取って代わられるか、あるいはAIによって支援される可能性がある仕事に就いている。IBMのアービンド・クリシュナCEOは5月に、AIがこなせると同社が考えている職務を担う人材の雇用を停止すると述べていた。
(forbes.com 原文)