欧州

2023.12.12 10:30

徒歩で突撃のロシア歩兵、ウクライナは戦車で迎撃 東部激戦地

ウクライナ軍のT-64戦車。2020年2月、キーウ地域で(Artem Grebenyuk / Shutterstock.com)

ウクライナの分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは11月24日、アウジーイウカ方面の戦闘について「ロシア軍は全体的に車両の使用を減らし、使う場合も投入数を絞っている」と報告。「小規模な戦術グループの使用が顕著に増えている」とも指摘している。
advertisement

だが、ロシア軍のこれらの歩兵部隊は、支援がない場合はウクライナ軍の経験豊富な戦車乗員の餌食になる。ウクライナ軍の指揮官もその点を理解しているようだ。ウクライナ軍はアウジーイウカ方面に少なくとも5個旅団の一部あるいは全部を配置した。うち4個は機械化旅団で、それぞれ、十数ないし30両の戦車を保有する1個戦車中隊もしくは大隊が置かれている。1個は戦車旅団で、こちらは数個戦車大隊を擁する。

ウクライナ側が実際のところ、どのくらいの数の戦車をアウジーイウカの防衛戦に投入しているのかは不明だ。数十両かもしれないし、数百両にのぼるのかもしれない。いずれにせよ、古いT-64やそれよりは新しいT-72、ドイツ製のレオパルト2など、いろいろな戦車のごたまぜなのは間違いない。ロシア軍から鹵獲(ろかく)したT-90も数両含まれるかもしれない。だが、支援のない歩兵分隊は、これらのどの戦車にもかなわない。

もっとも、ウクライナ軍のこうした戦車戦術によって、アウジーイウカが生き延びることが保証されるとは限らない。ロシア側がアウジーイウカ戦域に動員している兵力はウクライナ側より数千人以上多い。ロシア軍はこの方面で1日に数百人損耗していると言われるが、攻撃の手を緩める気配はない。
advertisement

英国防省によると、アウジーイウカでの戦いによって、ウクライナの1000km近くにおよぶ前線全体でのロシア軍の損耗は90%増えた

また、米首都ワシントンにあるシンクタンク、戦争研究所(ISW)は「ロシア軍はウクライナの前線全体で、ロシアが現在、新たに生み出している兵力をすべて失うのに近いペースで損失を出している可能性がある」と分析している。

しかし、これは裏を返せば、ロシア軍では、経験のある兵士が殺傷されるのと同じくらいの数の新兵が、毎日投入されているということでもある。ISWは、ロシアは「ウラジーミル・プーチン大統領が国内での影響を吸収する用意があり、またそうできる限り」、アウジーイウカでの作戦を続けられそうだとの見方も示している。

半面、ロシア軍は新たに動員する兵力をすべてアウジーイウカに費やすことで、現在もしくは近い将来、ほかの場所を攻撃する機会を失っている可能性もある。しかもロシア側はこれまで、アウジーイウカ周辺でごくわずかしか前進できていない。

ISWによると「ロシア軍が作戦を継続する間、ロシアの戦力造成の取り組みが現在のペースなら、ロシアは高い損耗率のために、ウクライナにいる既存部隊を完全に補充・再編したり、新たな作戦・戦略予備を編成したりできない可能性が高い」という。

ロシア軍がほかの作戦のために戦力をつくり出していくには、アウジーイウカの攻略に成功するか、それを断念するしかない。だが、ウクライナ軍の戦車が立ちふさがる限り、アウジーイウカを落とすのは容易ではないだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事