働き方

2023.12.27 10:00

柔軟なリモート勤務方針の企業、収益成長率が高い傾向に 上場550社調査

遠藤宗生

Shutterstock.com

経営トップが出社を義務化したことに不満を持つ従業員たちは、リモートワークの方が生産性が高く、人材の多様性が増すと主張している。しかし、それに加えて、リモートワークの方が企業の収益が高まる可能性があることが、最近の調査結果で明らかになった。

ハイブリッド勤務管理サービスのスタートアップ企業で、柔軟性のある働き方に関するデータ「Flex Index」を作成しているScoop(スクープ)は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と共同で上場企業554社のリモートワーク方針と収益成長の関連性を分析した。その結果、出社か在宅勤務かを自由に選択できる上場企業の方が、出社を義務化している企業に比べ、過去3年間の収益成長率が16ポイント高いことが判明したという。

「両者の差は予想以上に大きく、われわれにとって大きな驚きだった」と、Scoopの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のロブ・サドーは話す。Scoopが公表するFlex Indexは、約7500社のリモートワーク方針を分析したものだ。同社は、2020年から2022年の収益成長を追跡し、高成長セクターと低成長セクターの違いを排除するために、業界ごとの業績データを正規化した。

スタンフォード大学教授の経済学者で、Scoopのアドバイザーでもあるニコラス・ブルームは、リモートワーク方針が従業員数の伸びに寄与することを示した過去のレポートと今回の調査結果を踏まえ、「リモートワークが収益成長の直接的な原因であると断言できないにせよ、この2つの報告書を総合すると、両者にはかなり強い関係性があると言える」と述べている。

在宅勤務が生産性を向上するか否かについての議論は、引き続き熱を帯びている。業務の効率化を理由に出社を義務付けるCEOが増える中、今回の調査結果は新たな議論の火種になる可能性がある。「リアルなデータや分析が少なすぎる。さまざまな見方や意見があるが、今回のように相関関係を実際に示したケースは少ない」と、BCGのシニアパートナーで、仕事の未来について研究するデビー・ロビッチは話す。

Scoopによると、従業員やチームが完全リモートで働くか選択でき、出社する場合は頻度やタイミングを自分で決めることができる「完全フレキシブル」の方針を導入した企業の場合、3年間の売上高成長率は21%だった。一方、週2~3日の出社やオフィスでのフルタイム勤務を義務付けている企業では、成長率は5%に過ぎなかった。成長率が大きいハイテク業界を除いても、「完全フレキシブル」な上場企業の売上高成長率は13ポイント高かった。
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編集=上田裕資

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