エコシステム

2023.12.18 08:30

BEENEXT佐藤輝英の描く「10年後の理想」 日本企業の揺るがぬ地位確立へ

眞鍋 武

――起業家から語られるアイデアが、まだ世の中にないものだとしたら、投資の際はどのような点を意識しますか。
 
解像度は大事ですね。
 
たとえ今はアイデアだけでも、ビジネスプランの組み立てや既存のフレームワークに落とし込むことは起業家自身でできること。ひらめいた人のアイデアを具現化させたいという熱力に周囲はひきつけられるものですから、現実に落とし込むためのプランを考えていないと、まだまだ一歩前に出られていないと判断せざるえませんね。そのうえ、解像度を高めること自体はお金がかかりませんから。
 
例えば、今やインドネシアを代表するオンラインマーケットプレイスとなったトコペディア。私が創業者のウィリアム・タヌウィジャヤさんに初めてお会いしたのは12年前で、まだ社員数が20人ぐらいのときでしたが、技術の力でインドネシア経済を底上げしたい、誰でも簡単にモノを売り買いできるようにしたい、頑張る人が報われる社会づくりに貢献したいという想いとともに、彼がこだわり抜いてつくったプラットフォームの一部始終を熱っぽく語りながら見せてくれました。
 
誰でも簡単に出品できる機能や、無数の島をかかえるインドネシアならではの物流サポート機能、まだまだ流通規模自体は年間数億円でビジネスモデルも確立前だったものの、プロダクトやサービスのすべてに彼の理念とこだわりが表現されていました。「これは本物だ。彼なら絶対に大きなものを作り上げる。そして絶対に諦めない」と思いました。そして、その場で投資をオファーさせていただきました。
 
――そうなると、投資はビジネスプランよりも、起業家に対して行うということでしょうか。
 
私としては、「天・地・人」という要素を意識しています。まず、起業家がすべてを決めますから第一に「人」になります。次にビジネスプランがインパクトを出せるかどうかは、マーケットの大きさなどの「地」が影響してきます。そして、最後の「天」がタイミング。やはり事業には立ち上げに適切な時機があるものです。
 
この「天・地・人」は必要最低条件で、どれか一つでも欠けていてはならないですね。
 
――佐藤さんは39歳のときにベンチャーキャピタルを創設しています。どんなモチベーションで次世代の起業家育成に取り組んでいますか。
 
「次世代」という言葉だと偉そうに聞こえると思いますし、そもそも次世代育成という感覚ももっていなかったりします。
 
テクノロジーの進化は日進月歩で、そのスピードは落ちることなく、加速する一方です。そうなると、若者のたちの未来を感じる力はますます重要になってくるはずです。未来を読める力とはまた別で、彼らは経験こそありませんが、テクノロジーの力を無意識に感じて、新しいサービスやプロダクトを生み出していきます。そのときに誰かのサポートが必要であるのであれば、私たちはそういう存在でありたい。
 
私は資産を築くこと自体にはあまり興味はなく、何かに貢献したいという思いが強いです。仲間やその家族のサポートや困っている人を助ける、社会課題を解決するなど。それらは他の人のためであるものの、自分のためでもあり、貢献する喜びともいえるかも知れません。そうやって自分自身が貢献できる場所に常に身を置き、一心不乱に取り組むことで、生きている実感を得られていますね。
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