BEENEXT佐藤輝英の描く「10年後の理想」 日本企業の揺るがぬ地位確立へ

佐藤輝英氏

ChatGPTをはじめとするテクノロジーの進歩が目覚ましい。一年後にどんな未来が待っているかさえ不透明に感じるなか、各業界のプロフェッショナルは現実を的確にさばきつつ、はるか先を見つめている。この連載では、「10年後の理想」をテーマに、さまざまなフィールドで活躍するプロフェッショナルに世界観を語っていただく。
 
第3回は、シンガポールを拠点とするベンチャーキャピタルBEENEXTの創業者兼CEOで、インドや東南アジアなど、新興国のインターネット企業への投資を進め、世界中の次世代起業家の支援をライフワークとする佐藤輝英氏に聞いた。
 
――佐藤さんは10年以上前からインドや東南アジアに注目されています。理由について聞かせてください。
 
ビジネス規模を規定するのは市場規模、その最大構成要素は人口だと私は考えています。インドやインドネシアは、GDPを見れば世界3位の日本より下位になりますが、10年単位で将来を考えたときには、人口が爆発的に伸び続ける国であり、これにテクノロジーのインパクトをかけ算したとき、どうなるかを見たかったという思いがあります。
 
きっかけは、2008年にアリババの創業者であるジャック・マーさんと会ったことですね。2009年に同社が10周年を迎えたときに中国本社も訪れましたが、その規模に圧倒されました。
 
当時感じたのは、「創業10年でどうしてここまで成長できたのか」ということ。もちろん、希代の経営者の存在があったのは当然ですが、「巨大な人口をもつ国の高度経済成長期にテクノロジーがかけ合わさったから」とも考えました。
 
とはいえ、当時の中国はすでに世界中からお金が流入していました。そのため、もし自分の人生で中国の爆発的成長のような瞬間に立ち会えるとしたらどこかと考えたところ、インドやインドネシアといった国々にたどり着いたのです。
 
12年前の当時はインドやインドネシアに投資するファンドもありませんでしたが、居ても立ってもいられず、リュックサック一つで出張し、行く先々で起業家に会い、投資をするようになりました。

――日本と現地で、起業家のマインドや考え方に違いは感じていますか。
 
当時はとにかく新しいものをみたいという好奇心に溢れていましたし、実はテクノロジーの起業家はどの国でも同じ匂いがするという共通項もありました。イノベーター独自の匂いとも言え、彼ら彼女らはアイデアを秘め、常にワクワクしています。
 
ところが、周囲の大多数はそのことを信じていない。そんな状況で、自分の考えを信じて人生をかけているのは、インドでもインドネシアでも日本でも変わりません。
 
だからこそ、私も起業家たちのモチベーションの源泉を探ろうとします。「ビジネスモデルはいいけど、何でそれをやりたくなったの?」と。そこで語られるパーパスと言えるものに納得感があれば、事業がうまくいく確率は高くなります。一方、借り物のように聞こえたときは、投資はしないようにしています。
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