アジア

2023.12.29 16:00

「幸せの国」ブータン、経済の起死回生策は「ビットコイン採掘」

Shutterstock.com

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世界で最も孤立した国のひとつであるブータン。その首都ティンプーの南にある丘の中腹には、数十個の輸送用コンテナが静かに横たわっている。その中では、高価なビットコインの採掘マシンが、この国の若き国王とその王国を魅了する貴重な通貨を生み出すために絶え間なく働いている。
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「龍王」とよばれるジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王の治世下で、ブータンは密かに暗号資産のシャングリラへと変貌を遂げ、政府はその土地や資金、エネルギーを投じて、経済的苦境から脱出することを願っている。

しかし、ブータン政府はこれらのマイニング(採掘)施設の場所や規模を明らかにしたことはなく、約4年前に同国が世界初の国営マイニング施設を立ち上げたことも、国外ではほとんど知られていなかった。

ブータン政府がデジタル資産への投資についてコメントし始めたのは、フォーブスが今年5月の記事で、同国の政府系ファンドが、破綻した仮想通貨貸し付けサービスのBlockFi(ブロックファイ)やCelsius(セルシウス)の顧客だったことを報じた後のことだ。
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そして今、フォーブスは関係者の証言と複数の衛星画像データに基づき、ブータン政府が運営する4つのマイニング拠点と思われるものの場所を特定した。

それらの施設のうちのひとつは、ブータンの教育と知識のための国際拠点になるはずだった、失敗した「エデュケーション・シティ」と呼ばれる10億ドル(約1400億円)の巨大プロジェクトの跡地に建設されている。過去の衛星写真によれば、その建設は2021年12月頃に開始されており、それと同時期に、財務省の税関データに1億9300万ドル(約270億円)の「プロセッシングユニット」の輸入が記載されていた。

ブータン政府は、若者の失業率が上昇し、国外移住者と人材流出が急増する中で、未来を確保する手段として、教育都市プロジェクトを国民に宣伝していた。ロイターは今年8月、ブータンの人口の約1.5%が2022年にオーストラリアに移住し、その多くが雇用と賃金の向上を求めていたと報じた。地元紙のKuenselによれば、ブータンの最低賃金は月額わずか45ドル(約6400円)で、人口の約12%が貧困ライン以下で生活している。

エデュケーション・シティはそれを変えるはずだった。2009年、ブータン政府はコンサルティング会社のマッキンゼーに約900万ドル(約13億円)を支払い、10億ドルの「医療、教育、金融、ICTサービスのための世界クラスの地域ハブ」の設計を依頼した。2つの川の合流地点に位置する1000エーカー(約400万平方メートル)のキャンパスは、同国の実験的な国民総幸福量(GNH)経済モデルの道標であり、アジアにおける高等教育ハブとなるはずだった。

しかし、そのいずれも実現しなかった。政治的スキャンダルや、管理上の不手際によってプロジェクトは遅延し、2014年に廃止された。そして、現地に残されたのが道路や橋などに加え、ビットコインのマイニングに必須の電力インフラだった。

ブータン政府の投資部門であるDruk Holdings & Investment(DHI)は、マイニング施設の存在を認めている。「ブータンにおけるビットコイン採掘関連施設の用地は、電力供給などのさまざまな要因に基づき選定された」と、DHIは外部の通信会社を通じてフォーブスに語った。しかし、「我々は、機密事項については開示しない」として、その場所についてのコメントは避けた。
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編集=上田裕資

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