三人寄れば文殊の知恵というように、今回は「インキュベーション女子会」と題して、三者三様の立場で事業創出や次世代を担うアトツギたちをサポートしてきた女性3人が、起業支援の裏話を赤裸々に語る。
ゲストは、アトツギのママさんことベンチャー型事業承継 代表理事の山野千枝、ビジネスモデルの母こと狭山市ビジネスサポートセンター センター長の小林美穂、リーダーシップの女神ことなごのキャンパス プロデューサーの粟生万琴。聞き手に、スモール・ジャイアンツ担当の督がお送りします。
インキュベーターの極意
──インキュベーターの仕事は、事業者の裏方でもあるのでなかなか表に出てきません。日々、経営者の方々と接する皆さんの仕事の極意を教えてください。山野:私はアトツギの皆さんに対して、指導しないと決めています。マインドセットの助言はしますが、具体的な戦術はアドバイスしないって決めています。簡単に正解を求めようとせず、十分に迷走してくださいと。
アトツギは、特に自問自答が必要なステージ。自問自答しながら、仙台とは違う自分らしいリーダー像、会社のあり方を探って行動を起こしながらたどり着くプロセスが一番彼らを成長させるんじゃないかと思っています。だから私は管理人のおばちゃんのように、あるいは寮母さんがずっと寮生を眺めているみたいな立場で観察はしていますが、指導はしません。
小林:まず大前提として、こんな仕事をしながら私は自営業の経験がないんですね。その中で私が大切にしているスタンスは、「縁に立つ」ということです。
まずは会社の中を見る。外から物を言ってもなんの説得性もないので。そのために現場に足を運び、一緒に飯を食う。とても大事なことです。その反面、中に入りすぎると見えなくなるというのも中小企業支援の事実です。なので外から俯瞰して見る、入りすぎないというのも気をつけています。中でも外でもないちょうどいい縁に立つ、その距離感は仕事をする上ではすごく大切にしているところではありますね。
粟生:私は山野さんにも似ているのですが「魚を与えるのではなく餌を与える」というのが私のやり方です。餌を与えると、大体釣りの仕方を教えてくださいと言ってくるんですよ。確かに「こういう釣りの仕方ができるよ」という指導はできますが、必ずしもその仕方があっているとは限らない。1次情報だけでは学びにならないから、2次情報として餌はこれがいいよとおすすめするので、釣りの仕方はなるべく自分で実戦でやってみてくださいと伝えます。
特に若い世代、大学発スタートアップを見ていると、タイパ世代(*タイムパフォーマンスを重視する価値観)だからか「どうやったらうまく行きますか」と正攻法を聞いてくる聞いてきますが、「うまくいく方法なんて知らないよ」と伝えます。成功事例を聞いても成功しないから、失敗事例から学んでね、と。