「今年は実験の年だ」と、カリフォルニア州パロアルトのスタートアップGlean(グリーン)の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のアルビンド・ジェインは言う。同社は、内部文書などの社内情報をグーグル検索のような形で検索できるソフトウエアを販売している。「来年になれば、各企業のCFOは『あれだけ金を使った結果得られた価値を示しなさい』と要求し始めるだろう」と彼は話す。
その点で、Gleanは競合他社を大きくリードしている。同社は、ゼネラル・カタリストやクライナー・パーキンス、ライトスピード、セコイアといったシリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルから1億5500万ドル(約220億円)を調達している。また、データブリックスやナイアンティック、Tモバイルを含む200社以上の企業がその製品を利用。顧客企業では従業員の約40%がGleanを日常的に使用しており、業務習慣を変えつつあるという。ジェインは詳細な業績の公表は避けたが、収益は数千万ドルに達したと述べている。
こうした勢いや、社内データやアプリケーションのサイロ化という企業が抱える課題を解決するポテンシャルが評価され、ジェインはフォーブスが今年公表した「仕事の未来50(Future of Work 50)」リスト入りを果たした。2000年代前半の大半をグーグルで過ごしたジェインによると、同社が2017年に開発したアーキテクチャの「トランスフォーマ(Transformer)」を抜きにGleanの成功は語れないという。トランスフォーマはGPTの「T」に相当する部分で、AIシステムが大量のデータを処理する方法に革命をもたらした。
「検索エンジニア」を自称するジェインは、グーグル時代に検索結果の読み込みの高速化を指揮した。自身の経験や元同僚との交流を通じて、エンタープライズサーチに革新をもたらす機が熟したことを悟ったという。ワークデイやSlack、グーグルドライブなど、異なるアプリケーションのデータを繋げて必要な文書を検索できるようにすることは困難であり、これまでスタートアップからグーグルまで多くの企業が挑戦してきたが、苦戦を強いられている。