合成メラニンを米大学が開発 強力な日焼け止めや保湿材、皮膚の損傷治療に期待

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年々気温が上昇し、紫外線が強まる中、どうしたら肌を日光から効果的に守ることができるのかと心配する人は多い。日焼けをするたびに皮膚がんのリスクが高まり、肌も老化する。日焼け止めは肌を守るために欠かせないものだが、それでも限界があり、すべての紫外線を遮断できるわけではない。オーストラリアやニュージーランドのような国は南極のオゾンホールに近いため、紫外線量が特に多い。

米ノースウェスタン大学の科学者は、10年近くにわたる研究の末、解決策となりそうな結果を導き出した。新しいタイプの非常に効果的な日焼け止めの促進剤や保湿剤として使用できる合成メラニンを開発したのだ。人間や動物の天然メラニンは、皮膚や目、毛髪に色素沈着をもたらす。この物質は日光に反応して色素が増加し、日焼けによる損傷から細胞を守る働きがある。

合成メラニンは人間の皮膚にある天然のメラニンを模倣しており、日焼けや化学熱傷による皮膚の損傷を治すために局所的に塗布することもできる。効果は皮膚そのものと体内全体の両方に現れる。この研究成果は最近、英科学誌ネイチャーに掲載された。

この技術は、傷ついた皮膚から発生するフリーラジカルを除去することで機能する。フリーラジカルの活動を抑制せずに放置すると、細胞に損傷を与え、最終的には皮膚の老化や皮膚がんを引き起こす可能性がある。合成メラニンは人間の天然メラニンに比べ、1グラム当たりに消去できるフリーラジカルの量が多い。研究チームは、フリーラジカル除去能力の高いメラニン構造に改良を加えた。合成メラニンは肌に塗ると表面にとどまり、下の層には吸収されない。合成メラニンは皮膚を安定させ、治癒の行程を設定するが、これは表層と全身の両方に見られる。

この研究の共同執筆者で、ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部の皮膚科医であるカート・ルー博士は、今回の発見の重要性を次のように説明した。「人は日常生活が肌に損傷をもたらすとは考えない。だが、毎日日焼け止めを塗らない状態で太陽の下を歩いていると、低レベルの紫外線を常に浴びていることになる。紫外線量は日中のピーク時や夏季に増加する。日光にさらされた皮膚は老化する一方で、衣服によって保護された皮膚はほとんど老化を感じさせないことはよくわかっている。こうした肌に対するあらゆる損傷が炎症を引き起こし、コラーゲンを破壊するフリーラジカルにつながる。これこそ、年齢を重ねた肌が若い肌とまったく違って見える理由の1つだ」

合成メラニンのクリームは、けがをした後に発生するフリーラジカルを吸収することで免疫系を落ち着かせ、炎症を抑えながら皮膚の治癒を促すことも発見された。皮膚の一番外側の層である角質層は、内側の層と連絡を取り合っており、表面の破壊的な炎症を抑えることで、合成メラニンは身体の治癒をより効果的に助ける。

研究チームは、人間の皮膚組織サンプルを化学薬品で水ぶくれにし、上皮層が剥離した状態で実験を行った。合成メラニンのクリームを塗ると免疫反応が起こり、治癒が促進され、健康な皮膚層が保たれた。

ジャネスキ博士とルー博士が開発した合成メラニンは、化粧品への応用だけでなく、神経ガスや重金属などの毒素から人間を守る目的にも応用できる可能性がある。

研究チームは現在、合成メラニンクリームの臨床解釈と有効性試験を行っている。初期の試験では、このクリームは人間の皮膚に刺激を与えないことが確認された。この画期的なクリームは、放射線被曝による皮膚熱傷の治療にも道を開く可能性があり、放射線治療を受けているがん患者に新たな選択肢をもたらすかもしれない。

この革新的な「スーパーメラニン」クリームは、スキンケアの新時代を切り開き、皮膚の保護と回復のための強力な武器となると同時に、軍事分野での保護や環境毒素の吸収といった分野での応用も期待できる。この研究は将来、健康で回復力のある肌を得るための明るい展望を示している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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