バイオ

2023.12.10 15:00

「デンキウナギの放電」周囲にいる生物の遺伝子を組み換えることが明らかに

Nichole Casebolt / Shutterstock.com

デンキウナギが放電によって近くにいる生物の遺伝子を変化させることが、新たな研究で判明した。

宇宙は私たちが考えているよりも不思議であるだけでなく、私たちが考え得るよりも不思議だ。- ヴェルナー・ハイゼンベルク

デンキウナギは本当に驚くべき生き物である。キッチンの食器洗い機を動かすのに十分な電気を生産したり、クリスマスツリーを点灯させることができるだけでなく、最近では、彼らの電気パルスが近くの水生生物の遺伝子を変化させることもできることが判明した。本当だ、読み間違いではない。この衝撃的な発見は名古屋大学の研究グループによって報告されたが、彼らによれば、デンキウナギの放電は小魚の幼生の遺伝子を改変できるという。

微生物の遺伝子を電気で変えることは一般的な実験技術である。私はこの技術を何百回も(何千回も?)使って、特定の遺伝子を特定のバクテリアに導入したことがある。この技術はエレクトロポレーション(電気穿孔法)と呼ばれ、細胞膜に一時的な孔(あな)を作り、DNAやタンパク質など目的の分子が標的細胞に入るのを可能にする生物物理的プロセスである。細胞は自らこれらの孔を修復し、新たな遺伝情報を発現しながら生存を続ける。

研究チームは、名古屋大学の本道栄一教授(生命農学研究科)と飯田敦夫助教(同)が共同で率いた。飯田助教のエレクトロポレーションに関する知識と魚類に関する専門知識に基づき、研究者たちは、水中で電気パルスが流れると、周囲の生物(微生物だけでなく)にも影響を及ぼし、水中に浮遊するDNA断片を取り込む可能性があると提案した。こうした浮遊するDNA断片は環境DNAとして知られている。

端的に言えば、デンキウナギの専門家である飯田助教は、エレクトロポレーションは単なる実験室だけの現象ではなく、自然界にも存在する現象である可能性を提案したのだ。

「自然環境でエレクトロポレーションが起こる可能性を考えました」と飯田助教は説明する。「アマゾン川に生息するデンキウナギはエレクトロポレーションを行う装置よりも遥かに高電圧の電気を発生させることが知られています。そこでデンキウナギを電源、周辺に生息する生物をレシピエント細胞、水中に遊離した環境DNA断片を外来遺伝子で見立てると、デンキウナギの放電によって周辺生物で遺伝子組み換えが起こるのではないかと仮説を立てました」。
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翻訳=酒匂寛

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