表彰より宣伝優先 今年のThe Game Awardsは「セルフパロディ」

ゲーム賞「The Game Awards」授賞式で登場した、人気ゲームを原作とした実写ドラマ『Fallout』のキャスト(Photo by Anna Webber/Getty Images for Prime Video)

セレブを優遇

受賞者に対する扱いは、他の登壇者とは対照的だ。各部門のプレゼンターを務めたセレブのとりとめのないトークには、時間制限はなかった。TGAは再び、ハリウッドから承認を得ることに必死となり、大物俳優のマシュー・マコノヒーを登場させて、彼が新作ゲームの声優を務めるというニュースを発表させた。俳優のシム・リウは受賞スピーチの5倍の長さを与えられ、自分が足をけがした理由について話した。極めつけは最高賞であるGOTYの発表で、プレゼンターはなぜか俳優のティモシー・シャラメが務めた。少なくともシャラメは、自分が登場したことに皆が感謝すべきだとうような厚かましい素振りは見せなかったが、いったい彼を起用した理由は何だったのか? このようなことはもう過去のものとなったはずなのに、テレビ局スパイクがかつて主催していた「VGX」賞の時代に逆行している。

マペットと小島秀夫への執心

それから「ジェフのご執心」とでも呼べるものがある。その1つが、ジェフ・キーリーが毎年繰り返すマペット(操り人形)のコーナーだ。これもまた、本来ならもっと多くのクリエイターをステージ上で表彰するために割かれるはずの時間を無駄にしている。また、小島秀夫監督が皆から愛されていることには間違いないが、キーリーが毎年、彼の漠然としたプロジェクトを大々的に紹介するために15分のインタビューを行うのは、授賞式の他の部分が容赦なく削られていることと比べると、ばかげている。概して、1つの新作ゲームの宣伝のためのトレーラー上映やインタビューにかけられた時間は、ステージ上で1つの賞が授与された時間の5倍ほどだった。その上、キーリーが4~5部門の受賞作品を40秒で矢継ぎ早に発表する場面が、少なくとも4回はあった。

社会問題への言及はなし

そしてもちろん、授賞式の全体的な雰囲気として「ゲームは人々を1つにする!」以外のメッセージは発せられなかったという問題がある。この1年でゲーム業界では1万人近くが職を失っており、キーリーがせめてその事実に言及することを誰もが待っていたが、話題に上ることはなかった。また、ゲーム業界の未来を担う多様な人材を紹介する企画「フューチャー・クラス」でも、パレスチナ自治区ガザ地区で起きている人道危機についての訴えはなかった。受賞スピーチで、関係者への感謝の言葉以外のことに言及する時間が与えられていたなら、こうした問題に言及できた人もいただろう。
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私は以前、TGAが特にここ数年で大幅に改善したと指摘していた。今も新作ゲームの宣伝の場であることは変わらないが、真の意味でのアワードとして、ゲームやクリエイターを称えようという努力が感じられることもあった。だが今年はそういったものがほとんどなく、ハリウッド俳優やマペット、小島秀夫を優先して、アワードとしての体裁が取り払われてしまったように感じた。TGAはこれを改善すべきだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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