北米

2023.12.07

米国、ロシア軍人を戦争犯罪で初起訴 ウクライナで米国人に拷問

米司法省の庁舎(Jim Lambert / Shutterstock.com)

ロシアによるウクライナ侵攻の初期、ウクライナで米国人を拉致し、処刑すると脅したなどとして、米司法省は6日、ロシアの軍人4人を拷問などの戦争犯罪で起訴したと発表した。米司法省がロシアの軍人を戦争犯罪で起訴したのは初めて。

起訴されたのはロシア軍の部隊指揮官であるスレン・ムクルチャンとドミトリー・ブドニク、下級兵で姓不明のバレリーとナザールの計4人。不法な拘禁、拷問、非人道的な取り扱いという3つの戦争犯罪と、戦争犯罪を共謀した罪に問われている。起訴は5日付。

6日に開示された起訴状によると、4人は2022年4月、ウクライナ南部ヘルソン州のムィロベ村で米国籍の男性を拉致し、10日以上にわたって違法に尋問したとされる。4人は男性を裸にし、激しい暴行を加え、写真を撮ったという。男性の氏名は公表されていない。

ムクルチャン、ブドニク両被告は少なくとも2回の尋問を主導し、それに立ち会った。これらの尋問の間、4人は男性に対して「身体および精神に多大な苦痛を与えることを明確に意図した行為」を加えた。男性は、戦時の文民保護などを定めた1949年のジュネーブ条約で保護される対象だったと起訴状は指摘している。

4人は米国人を殺すと脅し、模擬処刑を行ったともされる。具体的には男性を地面に押し倒し、後頭部に銃を突きつけたという。

司法省によると、4被告の現在の所在地は不明。ロシアは米国で訴追された自国民の引き渡しには応じないため、4人がロシア国内にいる場合、裁判にかけるのは難しいとみられる。

ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻して以降、ロシアの複数の高官も戦争犯罪の疑いに問われている。国際刑事裁判所(ICC)は今年3月、ウクライナの子どもたちをロシアに強制移送したのは戦争犯罪にあたるとして、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領らに対する逮捕状を出した

カマラ・ハリス米副大統領は今年のミュンヘン安全保障会議で、ロシア軍によるウクライナでの子どもの大量移送、ウクライナ南部の都市マリウポリでの民間人殺害などを列挙し、ロシアは戦争犯罪に関与していると非難した。ジョー・バイデン米大統領はプーチンを「戦争犯罪人」と呼び、裁きを受けさせるべきだとの考えを示している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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