ヘルスケア

2023.12.07 11:00

新たな肥満治療薬「ゼップバウンド」、米国の薬局で販売開始

oleschwander / Shutterstock.com

米製薬会社イーライリリーが減量を目的に開発した糖尿病治療薬「Zepbound(ゼップバウンド)」が、米食品医薬品局(FDA)の承認を受けてから1カ月足らずで、米国の薬局で入手可能になった。この治療薬は、「オゼンピック」や「ウゴービ」などの入手困難な人気の肥満治療薬と並ぶことになった。

一般名は「チルゼパチド」と呼ばれるゼップバウンドは、肥満症または2型糖尿病や心臓血管病など、少なくとも1つの体重関連疾患を持つ過体重の成人を対象とした週1回の注射剤だ。肥満症の患者は、米国内の小売店やEコーマス薬局でこの治療薬の処方を受けられる。

ゼップバウンドの定価は1カ月あたり1060ドル(約16万円)だが、イーライリリーの「コマーシャル・セービング・カード・プログラム」を用いた場合は550ドル(約8万円)で入手できる。一方、この治療薬をカバーする保険に加入している患者は、1カ月あたり25ドル(約3700円)を支払うことになる。

臨床試験では、ゼップバウンドを週1回15ミリグラム服用した場合、72週間で体重が22.5%減少することが確認された。

ゼップバウンドはGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬で、食欲と食物摂取を抑えるホルモン受容体を活性化する。この薬はまた、食後にインスリンを分泌して血糖値をコントロールするGIP(グルコース依存性インスリノトロピックポリペプチド)ホルモンを模倣する。

ゼップバウンドは糖尿病薬としてすでに承認されていたマンジャロと同一の有効成分チルゼパチドを含有している。FDAはゼップバウンドの他に、ウゴービとサクセンダという2つの類似した減量治療薬を承認しているが、肥満治療によく処方される糖尿病治療薬オゼンピックは減量治療薬としては承認されていない。

FDAによれば、米国成人の約70%が肥満または過体重であり、過体重の人の多くが体重に関連した疾患を抱えている。

ゼップバウンドを服用する患者は、カロリーを減らした食事と併用し、同時に身体活動を増やすべきだとイーライリリーは述べている。

11月にFDAがゼップバウンドを承認したとき、当局はこの薬が甲状腺癌を含む腫瘍をヒトに引き起こすかどうかは不明だと述べていた。イーライリリーは現在、この薬が「甲状腺癌を含む甲状腺の腫瘍を引き起こす可能性がある」と警告している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事