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2023.12.08 08:30

Xを破滅に追いやるイーロン・マスクの「破壊衝動」

イーロン・マスク(Shutterstock.com)

あまり大げさなことを言いたくはないが、イーロン・マスクが先日、Xから広告を引き揚げた企業を「くたばれ」と罵倒したことは、かつてツイッターと呼ばれたプラットフォームの棺桶に最後の釘を打ったようなものだと、筆者は思っている。

筆者がしばしば「お気に入りのソーシャルメディア・アプリ」と呼んできたものから、先週より大手の広告主が次々と逃げ出している。事の発端は、イーロン・マスクが反ユダヤ主義的なツイートに賛同したことだった。そのツイートを正当化し、その過程で明らかにツイッターを葬り去ろうとしたマスクの破壊衝動については、他のライターや本の著者がすでに書いているので、ここでは詳しく分析しようとは思わない。

とはいえ、私はこれが悪い方向に向かっているという事実を嘆いている。反ユダヤ主義的なツイートと広告主からの予想通りの反撃の後に、マスクは暴言を吐いた。一部の報道によれば、この暴言は取り返しのつかないダメージをXの事業に与えたという。

私たち全員がマスクに問うべきは、「なぜ自分の会社を潰そうとするのか?」という質問だが、私はその答えを知っているつもりだ。

多くのオピニオン記事や、マスクに関する最近の書籍(ウォルター・アイザックソンによるやや肯定的な伝記や、あからさまな暴露本でかなり面白い『Breaking Twitter』など)を読んだ筆者は、このソーシャルメディアで初期の頃から自身が経験したことを振り返った結果、マスクは自分を制御できないのだという結論に達した。彼はトラブルに首を突っ込むのが好きなのだ。首を突っ込んだために、彼はツイッターの買収で440億ドル(約6.5兆円)を失った。

『Breaking Twitter』の著者が書いたように、Xの収益の90%は広告主からのものだという主張が正しければ、すべてが塵と消えるのは時間の問題だ。Twitter Blueや他のサブスクリプションは、確かに何の助けにもならないだろう。マスクはつい最近、会社の倒産をほのめかした。アイザックソンが著書で詳しく説明しているように、マスクは破壊的な衝動を精神の中に抱えている。

また、『Breaking Twitter』を読めば、著者が(著作に書いている人物と同様に)どこまで本気なのかは定かではないものの、マスクが全人類を大規模なシミュレーションの一部に過ぎないと考えているフシがあることがわかる。マスクは、現実世界を『グランド・セフト・オート』のようなゲームだと考えているのかもしれない。ルールに従って、決められたコースを進むことができる一方で、完全にレールから外れて走り回り、物を破壊しまくることもできるのだ。

すべてはゲームの中の出来事

マスクは、そのうちの後者をやっているようだ。すべてがシミュレーションに過ぎないのであれば、たとえ会社を破壊し、その過程で何十億ドルもの損失を被ったとしても、いずれにせよ何の問題もない。

「有名なブランドで本当に間違った決断を繰り返し、そのブランドが完全に崩壊してしまったらどうなるだろう? クールだろ?」マスクはそう語りかけているように見える。NPC(プレイヤーが操作しないキャラクター)はソーシャルメディアのフォロワーのようなもので、消耗品だ。マスクは彼らのことをそれほど気にかけていない。

しかし、問題は、それがクールなんかではないことだ。彼の発言によってXの社員は、次に何が起こるかわからないというギリギリの状態で毎日を過ごしている。広告主は何百万ドルも費やし、それがすべて無駄だったことに気づく。筆者にとっては、Xを使い続ける意味が徐々に失われていることを意味する。だからといって、良い代替品もあまり見当たらない。

Xはどのように最期を迎えるのだろうか? すぐにゲームオーバーの画面が見られるかどうかは分からないが、マスクの破壊計画が最終段階に入ったことは確かなようだ。それはとても残念なことだ。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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