ビジネス

2023.12.08 12:45

営業改革成功の最大の鍵は、営業マネージャーを育てること(前編)

営業マネージャーが正しく動くためには、経営者の「腹決め」が不可欠

理想的なマネージャーの時間の使い方が分かったとしても、それを営業マネージャー個人で変えるのは難しい場合が多いです。報告資料やデータ入力がマネージャーの時間を圧迫していることが調査で見えてきたら、効率化するために、組織全体で改革を推進することが必要です。

そもそも、中間管理職に様々な責任や仕事量が集まり、疲弊している、新たにコーチングに時間を使えなんて無理だ、という企業も多いのではないでしょうか。だからこそ、本当に企業価値につながる仕事だけにマネージャーが時間を使い、各人のモチベーションも上がるように、経営者が改革にコミットすることが大切なのです。

日本企業で良く見るのは、過去からあるシステムと、後から入れたCRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援ツール)などのツールが連携しておらず、二重三重にデータを入れなくてはならないケース。導入時にIT部門や企画部門に任せ過ぎず、現場の営業やマネージャーの手間が本当に省けるのか、細かいレベルまでチェックするのはユーザ部門の経営層の責任です。私自身がクライアント企業の営業改革でCRMやSFAの導入に携わる際は、仕様設計のミーティングにマッキンゼーメンバーの同席をお許し頂き、細かな入力や連携状況もチェックさせて頂いております。初期のボタンの掛け違いがその後の営業生産性に大きく影響することを良く知っているからです。

また、CRMから会議に必要なデータを出力できるにもかかわらず、経営層がCRMの使い方に習熟していないため、営業マネージャーが別途報告資料を作成しているようなケースも散見されます。経営者は「資料まとめておいて」「データちゃんと入れて」というちょっとした一言が、営業マネージャーの時間を圧迫していることを認識しなくてはなりません。私自身が営業改革をご支援する際も、本部長以上の経営層が経営会議の準備のために、営業マネージャーに個別の資料作成を要求している場合、個別の資料作成を辞めて頂く一方、CRM/SFAの使い方講座をさせて頂いて、経営層がご自身でツールを使いこなせるようになって頂きます。ツールを活用して、出来る限り個別資料の作成をしなくて済むよう、経営層が意識することが大切なのです。

社内会議が多すぎる場合は、マネジメントが厳選してその数を削減する必要があります。営業マネージャーがコーチングに力を入れられるようにするには、このような経営者の「自分の一言が無駄を産んでいるという意識」と、組織を変える「腹決め」が不可欠なのです。
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文=倉本由香利

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