多くの日本企業で起こる、残念な営業マネージャーの時間の使い方
どのようにして有能な営業マネージャーを育てるか。一つ目のコツは、「マネージャーの時間の使い方を変える」ことです。私は営業改革をご支援する際、最初の診断で営業マネージャーの時間の使い方調査を含めることが多いです。
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人間が変わる方法は三つしかない。
一つは時間配分を変える、
二番目は住む場所を変える、
三番目は付き合う人を変える、
この三つの方法でしか人間は変わらない
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これはマッキンゼーの出身者で著名な大前研一の言葉ですが、実際、企業でも人を育てるときに最も有効かつ短期間で成果が出るのは、時間の使い方を変えることです。まず、自分が何に時間を使っているのかを知り、意識して時間の使い方を変える。更に、変えられるように組織自体の優先順位を変えていくのです。
では、現在多くの日本企業で、営業マネージャーが最も時間を使っているタスクは、一体何だと思われますか?
私の経験では、日本の営業マネージャーが最も時間を使っているのは、報告資料作成やデータ入力、そして社内会議というケースが多いです。また、担当顧客を持ちながら管理も行うプレーイングマネージャーも日本には多く、営業活動そのものがマネージャーとしての時間を圧迫しています。後述しますが、これらは全て経営マネジメント側の認識不足や知識不足のために生じている残念な状況です。
一方、グローバルのベストプラクティスでは、営業マネージャーが一番時間を使うのは、営業パーソンへの一対一のコーチング、コーチングの準備、トレーニングです。また、マネージャー自身がマネージャーとしてのスキルを上げるための、上級職から受けるコーチングにも時間を使っています。真の営業マネージャーは有能なコーチである、という言葉の通り、実際に、有能なマネージャーはコーチングに最大の時間を使っているのです。
有能な営業マネージャーは、営業へのコーチングに最大の時間を割く
日本企業の営業会議は多くの場合、コーチングではありません。たくさんの営業パーソン、マネージャーが一堂に会し、営業状況の報告をするスタイルの会議。大人数の会議で、営業パーソン個別の業績や課題に触れることは余りありませんから、コーチングにはなり得ないのです。コーチングとは、営業一人一人の現在の能力や性質を踏まえて、個々が直面する営業上の課題を解く手助けをし、そのスキルを磨くためのものです。例えば、顧客にクロスセル提案がうまく行かない営業パーソンがいれば、具体的にどの部分で煮詰まっているのか、何が原因か、本人の仮説を吐き出させ、本人が思い至らない可能性を提示し、より全体的な視点からどうしたらうまく行くのか、を考えさせるのがコーチングです。
また、商談のリハーサルを何度も行い、スキルを磨くのもコーチングでの重要な要素です。営業マネージャーを顧客に見立て、難しい会話を切り抜ける訓練を何度も定期的に行い、営業パーソンのスキルを構築します。
したがって、一対一でも複数人でも良いのですが、営業本人の抱える個別課題に切り込み、一緒に考えることができる程度の少人数で行う必要があります。また、マネージャーの側でも、ある程度の分析や仮説などの準備をしておく必要があります。