今回の研究結果は、地上のインフラに直接影響を及ぼすほど強力な太陽嵐が、従来考えられていたよりも頻繁に発生することを裏付けるものだ。
太陽の表面で発生するフレアという爆発現象では、大量の荷電粒子が一気に放出される(コロナ質量放出)。これが太陽嵐となって地球に到達すると、地球の磁場が乱される。
記録に残る最大の太陽嵐は1859年に発生した「キャリントン・イベント」だ。英天文学者リチャード・クリストファー・キャリントンが、太陽表面で発生した巨大フレアを史上初めて観測。その後、数週間にわたり赤道付近までの広域でオーロラが観測され、日中にも見えたと伝わる。当時は携帯電話や電子機器が普及するずっと前だったため、幸いにも被害は非常に限定的で済んだ。
今日では、米海洋大気庁(NOAA)宇宙天気予報センターが太陽活動とインフラへの影響を監視している。電力網や衛星通信は、太陽嵐による干渉や妨害を受けるリスクが高い。
研究チームは、1872年に目撃された異例の発光現象に言及した数百件の記録を、地磁気の測定値や太陽黒点の記録と結びつけ、それらがすべて太陽活動のピーク(極大期)と関連していることを明らかにした。
世界中の図書館・公文書館に収蔵された記録や天文台の報告書を調べたところ、日本、米国、オーストラリア、インド、メキシコ、マダガスカル、欧州各地で、夜空を照らす壮大なオーロラが発生したことを示唆する700件以上の記録が見つかった。オーロラは、太陽から飛来した荷電粒子が地球の大気中のガスと衝突して発光する現象だ。これほど広範囲で観測された1872年のオーロラを引き起こした太陽嵐は、相当強力だったに違いない。