宇宙

2023.12.06 14:30

「超巨大太陽嵐」の発生、従来説より頻繁か


一方、このときインドのボンベイ(ムンバイ)、グルジアのティフリス(現ジョージアのトビリシ)、英グリニッジなどで記録された地磁気測定値からは、地球の磁場に強い変動があったことがわかった。

磁気嵐の規模は、熱帯地域でも科学技術インフラに影響が出るほど大きかった。インド洋の海底ケーブルの電信通信は数時間にわたって途絶し、エジプト・スーダン間の固定電話回線も通信障害に見舞われた。

一連の事象と太陽活動との関連性を証明するため、研究チームはほとんど忘れ去られていたベルギーとイタリアの太陽黒点記録に注目した。その分析結果は、中規模の黒点活動であっても史上有数の激しい磁気嵐を引き起こし得たことを示している。

今回の発見について、研究の主執筆者である名古屋大学の早川尚志特任助教は、1872年2月のチャップマン・シルバーマン・イベントが「近代史上最も激しい磁気嵐の1つ」だったことが確認されたと説明。その規模は、1859年9月のキャリントン・イベントや、1921年5月にニューヨークを襲った磁気嵐(ニューヨーク鉄道嵐)に匹敵するものだったと述べた。

英ラザフォード・アップルトン研究所(RAL)の客員研究員でもある早川特任助教はまた、こうした極端な太陽嵐は「めったに起こらない」としつつ、「現代に入ってからこのような超巨大太陽嵐が起きていないことは幸いだ」と指摘。その上で、わずか60年間に3回も超巨大太陽嵐が発生した事実は「現代社会にとって現実的な脅威」だとして、こうした現象の影響を評価し、理解し、緩和するため歴史的記録の保存と分析が重要だと結論付けている。

つい先日、米北部から欧州南部までの広域でオーロラが観測された。現在、太陽は2024年に極大期を迎えると予測される太陽周期に入っており、今後数年間は太陽活動が活発になるとみられる。

本研究「The Extreme Space Weather Event of February 1872: Sunspots, Magnetic Disturbance, and Auroral Displays(1872年2月の極端な宇宙天気現象:太陽黒点、磁気擾乱およびオーロラ発生)」は、米科学誌アストロフィジカル・ジャーナルに2023年12月1日付で掲載された。追加資料とインタビューは名古屋大学より提供された。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事