正確に言えば、第5戦車旅団は2016年に編成されていた。しかし、6年間はほとんど名ばかりといっていい存在だった。
2022年2月にロシアの全面侵攻を受けると、ウクライナ軍はやっと第5戦車旅団の大隊に人員と装備を充当し始める。だが、それも遅々として進まなかった。戦闘が激しさを増し、ウクライナ側でも損害が積み重なるなか、ウクライナ軍参謀本部は新兵や新しい装備の補充で既存の旅団を優先したからだ。
表向きには第5戦車旅団は2022年、ウクライナ南部のクリビーリフの守備に従事したことになっている。だが実際のところ、旅団の実体はまだほとんどなかった。
それがついに変わった。訓練中の第5戦車旅団員の公式写真が初めて公開されたことで明らかになった。写真が最近撮影されたものだとわかるのは、辺りが雪に覆われているからだ。
写っている第5戦車旅団の兵士たちは冬用の迷彩服をしっかり身にまとい、AK型アサルトライフルを構えている。第47独立機械化旅団など、より新しい旅団の兵士は米国設計のM16自動小銃を装備しているが、第5戦車旅団では違うようだ。
ただ、肝心の戦車はこれらの写真に写っていない。
昨年、第5戦車旅団がポーランド供与のT-72M1戦車やオランダ供与のYPR-765装甲兵員輸送車を取得するという観測が流れた。だが2023年現在もなお、そうした計画があるのかどうかは不明だ。
ウクライナ軍は、整備されて無償供与されたT-72戦車を数百両保有しており、一部を第5戦車旅団など新しい部隊に割り当てることもできるだろう。さらに米国からM1A1エイブラムス戦車を31両受け取っているし、ドイツ、オランダ、デンマークが共同で200両近くの供与を約束しているレオパルト1A5戦車も届き始めている。
これらのM1A1とレオパルト1A5はウクライナ軍で6〜7個大隊分に相当する。ウクライナ軍の機械化旅団は普通、30両ほどの戦車を保有する1個戦車大隊を擁する。戦車旅団の場合は3個戦車大隊が置かれる可能性がある。
これまで、レオパルト1A5を運用していることが確実にわかっているのは第44独立機械化旅団だけで、M1A1の配備先は皆目見当がつかない。第5戦車旅団は観測どおりT-72M1を運用する可能性もあれば、レオパルト1A5やM1A1が配分される可能性もあるだろう。
いずれにせよ、ウクライナ軍の南部司令部と東部司令部はこの新旅団を歓迎するに違いない。両司令部は戦闘の大半を担っており、第5戦車旅団の前線展開も監督することになるはずだ。