世界の人口が90億人にまで膨らみ、食糧需要が地球規模で急増する2050年、農業生産で最大の利益を得るのはアフリカかも知れない。ニューヨークとケニアにオフィスを構え、農業関連データを取り扱うGro Intelligenceの創始者、サラ・メンカ―によれば、地球上の耕作可能な未耕地の70%はアフリカ大陸に残されているという。
その土地を利用しようと画策する国があるなら、その筆頭は中国だ。中華人民共和国は、自国で消費する穀物を生産する目的で、アフリカ全土に約1200万エーカー(485万ヘクタール)の土地を既に買い上げていると、先日カリフォルニア州で行われたフォーブス主催のサミット『Forbes Reinventing America AgTech Summit』でメンカーは発言した。当日、会場を埋めたのは425人の起業家、投資家、農業関係者ら。彼らを前にメンカーはこう続けた。
「世界がこのことを知らないのは、これらの取引が水面下で静かに行われているからです。土地の買収は、中国が自国への輸出を目的とする、ゴマや小麦、とうもろこしの大規模生産計画の一環。彼らはアフリカで生産した作物を、全部自分たちの国へ持っていくつもりです。だからアフリカの農業や農民を潤すことには全くならないんです」メンカーはそう付け加えた。
しかし、中国のアフリカへの投資は、未だこれといった成果を生んでいない。いくらアフリカに広大な土地があるとはいえ、 インフラが十分整備されていないため、農業生産に適した土地は港へのアクセスが悪い場所にある。アフリカの農業に対する投資はサウジアラビアやカタール、UAEなどの国々や民間投資家らが乗り出しているが、彼らは農業生産事業を開始する前に、道路建設や土地の開拓に巨額の出費を余儀なくされるのだ。
インドの農業関連企業 数社は、国家予算に匹敵する巨額なインフラ整備資金を準備できず、事業開始前の段階で数々のトラブルに見舞われたと、メンカーは話した。
「立ち上げ段階で資金調達など財政的な問題に直面し、なかなか計画実現にこぎつけられないのが現状です。実現するためには、スタート時点で何十億ドルもの資金を確保する必要があります」とメンカーは言った。
それでも、これらの土地への投資が衰えを見せる様子はない。最終的にはアフリカが世界の食糧庫になると、メンカーは予測している。「新たな農地になり得る場所のどこで好機をつかむかが鍵になってくるでしょう。商業生産においても、これから先、更に市場は変わっていくと思われます」とメンカーは話した。