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2023.12.05

AI創薬のスタートアップ最大手、中国「Xtalpi」がIPO申請

(C)XtalPi

深圳に拠点を置く人工知能(AI)を活用したデジタル創薬のスタートアップXtalPi(晶泰科技)は11月30日、香港証券取引所に新規株式公開(IPO)を申請した。

2015年創業のXtalpiの累計資金調達額は7億3200万ドル(約1070億円)で、AI創薬のスタートアップとしては調達額で業界トップだとされている。目論見書によると、同社の直近の資金調達は2021年10月の3億8000万ドルのシリーズDラウンドで、企業価値は約20億ドルだった。

Xtalpiの投資家には、ニール・シェンのHongshan(旧セコイア・チャイナ)やSino Biopharmaceutical(中国生物製薬)、フォーブスのミダスリストに選ばれたアンナ・ファン(方愛之)のZhenFund(真格基金)、Susquehanna International(サスケハナ・インターナショナル)、テンセント、グーグル、ソフトバンクなどが含まれる。

2014年に共同創業者でCEOのマ・ジエンを含む3人のマサチューセッツ工科大学(MIT)出身の中国人量子物理学者らが共同創業したXtalpiは、AIや量子物理学、ロボットによる自動化を駆使し、創薬プロセスの迅速化と成功率の向上を目指し、近年はアグリテック(農業テクノロジー)や化粧品などの用途に向けた新規化合物の発見にも進出している。同社は深圳に本社を置き、米国最大のバイオテクノロジー拠点であるボストンと北京、上海に研究拠点を設けている。

Xtalpiの6月までの6カ月間の純損失は8億9100万元(約185億円)で、損失は前年同期の5億8100万元から拡大した。同期間の売上高は86%増の8000万元だった。同社は、100以上のバイオテクノロジー関連の企業や製薬会社、研究機関に創薬サービスを提供することで収益を上げている。

Xtalpiの顧客は、ジョンソン・エンド・ジョンソンやファイザーのような世界的大手から、香港の富豪の李嘉誠のCKハチソン・ホールディングスのバイオテクノロジー部門のCKライフサイエンスなどの国内の大手まで多岐にわたる。

AIを使って創薬プロセスを迅速化するというアイデアは、バイエルやイーライリリー、ロシュ・ホールディングなどの大手製薬会社の関心を集めている。モルガン・スタンレーは2022年、初期段階の医薬品開発にAIを活用することで、今後の10年間で50の新規の治療法が生み出され、その価値は500億ドル以上に達すると試算した。

このテクノロジーはまだ始まったばかりで、実証されていないが、世界のAI創薬企業の中には、すでに人間を用いた臨床試験を開始した企業も存在する。その1社の香港とニューヨークに拠点を置くインシリコ・メディシンは最近、希少な肺疾患である特発性肺線維症を治療する新規の治療法の臨床試験に進んだと発表した。インシリコも6月に、香港市場でIPOを申請した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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