この恒星系「HD110067」の最も奇妙な側面は、6惑星が軌道共鳴状態にあることだ。主星に最も近い軌道の惑星が、主星の周りを3回公転する間に、主星から2番目の軌道の惑星は、ちょうど2回公転する。6惑星は全て、3対2か4対3の共鳴関係にある。
惑星系はすべてこのように進化すると考えられているが、木星のような巨大惑星、通過する恒星との近接遭遇、巨大衝突事象などにより、大半の惑星系にはカオスの要素がもたらされる。だが、HD110067はそうなっていない。
原初のままの惑星系
米シカゴ大学のラファエル・ルケは、プレスリリースで「共鳴状態を保っている惑星系は、惑星系全体の約1%にすぎないと考えられる」と述べている。「これは擾乱を受けることなく切り抜けてきた、惑星系の原初のままの配置を示している」これだけでもHD110067は特別だが、6惑星の共鳴系として知られているわずか3つのうちの1つでもある。また、4つ以上の惑星を持つことが知られている恒星の中では最も明るい。今回の研究をまとめた論文は、学術誌『Nature』に11月29日付で掲載された。
共鳴軌道
米航空宇宙局(NASA)のトランジット系外惑星探索衛星(TESS)は、2020年にHD110067を複数の惑星が公転している証拠を最初に発見。2022年に2つの惑星の存在が確認された。突破口が開いたのは、2019年末に打ち上げられたばかりの欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡CHEOPS(ケオプス)が、3つ目の惑星を発見したからだ。観測データを分析した研究チームは、惑星の軌道が共鳴状態にある可能性があることに気が付いた。これが一連の共鳴軌道を解明するカギとなることが判明し、さらに3つの惑星が存在する可能性のある位置が明らかになった。