ほとんどがロシア側の占領下にあるドニプロ川左岸にあって、クリンキの上空だけはウクライナ軍の電子戦部隊とドローン(無人機)運用部隊が支配しているからだ。それはまず、この空域からロシア側のドローンを排除し、続いてウクライナ側のドローンを一帯に配備することで実現された。
ウクライナの著名なドローン指揮官であるロベルト・ブロブディは、ヘルソン州で敵のドローンをつぶす方法のひとつを明かしている。ロシア側のドローンの映像を傍受し、それを利用して敵のドローン基地の場所を突き止める。その位置情報を第36海兵旅団の砲兵に伝え、ドローン基地を精密攻撃してもらう──というものだ。
ブロブディは最近ソーシャルメディアで共有された動画のなかで、このキルチェーン(目標の識別から破壊までの一連の措置)の一例を解説している。冒頭のあたりで、ロシア側のFPV(一人称視点)ドローンが撮影した映像が映し出される。ドローンはヘルソン州のどこかから発進しているようだ。
Strike on the base of the Russian FPV drone operators. Video by the Birds of Madyar unit. Kherson region.
— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) November 29, 2023
(46.7229458, 33.1941497)https://t.co/6AtXzsKsnA pic.twitter.com/mzhKtTcqPN
ウクライナ軍の電子戦部隊は、傍受したロシア側のドローン映像を第36海兵旅団のドローン運用部隊に中継した。ドローン運用部隊は映像の送信先の位置を特定し、そのドローン発射地点と考えられる場所に偵察ドローンを飛ばす。「準備が行われている間、われわれは(偵察ドローンからの映像で)あたりを見回すことができる」とブロブディは語る。
ここでの「準備」とは砲撃のことだ。
第36海兵旅団のドローン運用部隊は偵察ドローンからの映像に、ロシア軍のFPVドローン基地だと確信する特徴を見つける。ブロブディが指示棒で示しながら説明しているところでは、ひとつは無線アンテナ、もうひとつは、アンテナとロシア軍のドローン操縦士の作業場とみられる建物をつなぐケーブルだ。
次に起こったのはキルチェーンの最後として当然のことだった。砲弾かロケットが撃ち込まれ、ロシア軍のFPVドローン基地は爆破される。
鮮やかな作戦だ。ブロブディは最近、ウクライナ軍がFPVドローンによるロシア軍の車両に対する攻撃で、発見から破壊までわずか80秒という最速記録を打ち立てたことも紹介しているが、それに勝るとも劣らないほどの鮮やかさだと言っていいだろう。
(forbes.com 原文)