だがこの汚名的赤字について、テルモ元会長の中尾浩治氏は「日本が世界に技術力で劣っていることが原因ではないはずだ。現に、優位な世界シェアを獲得しつつあるスタートアップや中小企業は存在する」と話す。そこでForbes JAPANでは「HEALTHCARE CREATION AWARD 2023」と称し、中尾氏らとともに未来の日本を率いる医療企業を探し始めた。
その中で挙がってきた諸企業のうちの1社が、2018年創業、手術トレーニングで使用される、コンニャク粉から作られた模擬臓器の開発メーカー「KOTOBUKI Medical」だ。
同社は2019年、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」で、同ファンディング史上最高額の9000万円を達成。ジョンソン エンド ジョンソンはじめ、世界最大手の医療機器メーカーとの契約も次々と実現している。
同社の模擬臓器はどうやって誕生し、海を越えたのか。埼玉県八潮市のKOTOBUKI Medical本社に高山成一郎社長と海外PR担当の姫野エリン氏を訪ねた。
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手術の名手として名高い外科医も、同社製品で「毎朝トレーニング」
2018年創業、社員22名のKOTOBUKI Medicalは、地元八潮市では名物企業だ。2022年12月放送のテレビ東京「出没!アド街ック天国」埼玉県八潮市特集では、第1位カテゴリー「ものづくり」でランクインした。同社の人気製品には、八潮市のふるさと納税返礼品として採択もされた「ギネラパロトレーニングBOX」(47300円・税別)や、ラパトレK(25000円・税別)https://www.tech-kg-shop.com/SHOP/120265/list.html がある。施術のために膨らませた腹壁を模したプラスチック越しにポート穴から鉗子を差し込み、切開したり縫合したりの腹腔鏡トレーニングを行う練習器具である。
たとえば後者、「ラパトレK」は累計販売台数2000台以上(2022年9月時点)、腹腔鏡トレーニング製品というニッチカテゴリーにおける大型ヒット製品だ。
たとえば、この「ラパトレK」の開発にあたっては、がん研有明病院婦人科部長 金尾祐之医師に全面的な協力を仰いだ。手術の名手として名高い金尾医師自身も当ボックスを使って毎朝欠かさずに練習するという。