スタートアップ

2023.12.05 15:15

資本金10万円から時価総額400億へ。創業7年で上場の大躍進を遂げた背景

多くの大事なものを手放し覚悟を決めた河端氏には、創業から一貫して持ち続けていた思いがあった。それは、同社の理念である「不合理な常識を疑い、新しい合理的な常識を作り出す」。今では世界中で普及しているEコマースも、昔の常識ではネットで物を買うことは危ない認識であった。しかし現代の常識では、Eコマースは当たり前に我々の日常に溶け込んでいる。こうした非常識が常識へ変わる瞬間にビジネスは大きく動く、と河端氏は言う。そして、その中から同社としてエンジニアの価値向上を実現する上で、何が一番大事なのか。この問いに向き合って見えてきた答えが、エージェントサービスであった。

日本はよく知られている通り、世界と比べても人材の流動化がとても低いことで有名だ。実際に国際的な研究グループの比較研究によると、転職経験者の割合はドイツ42.7%、アメリカ38.2%、イギリス34.7%となっているのに対して、日本はわずか5.8%である。
(引用元 https://toyokeizai.net/articles/-/297946?display=b

日本は終身雇用といった日本特有の文化を持つ。そのため社員の雇用契約を解除することはとてもハードルが高い。だが一方で、アメリカでの雇用契約は多くの場合at-will雇用。会社側・従業員側のどちらからでも、好きなときにいつでも雇用を解除できる契約になっている。そこで、経営状況に伴って自由に契約を解消できる形態を、河端氏は着想した。特にそういったフリーランスの最大のデメリットを補うのが売り手市場である。

「2008年にスマートフォンが世の中に登場してから、インターネットサービスの需要が大爆発しています。未だにwebエンジニアの有効求人倍率に至っては、10倍を下回ったことがないほど、ずっと強い需要があります」

フリーランスにおける最大のデメリットを削減でき、メリットを最大限享受できるパッケージ。それこそが ITフリーランス向け案件紹介サービス、Midworks(ミッドワークス)の誕生であった。

企業価値400億への出発点



「僕は夢を持てない。でも目標は明確に持つタイプです」と河端氏は言う。

同氏は、頑張った時の成功角度1%を夢として定義する。そして、頑張った時の成功角度50%の達成率を持つものを、目標と定義している。常に顕在的な市場に向き合い、今の市場に対する競合優位性や差別化ポイントの余地を見つけてきた。潜在的な市場で稀に掴む満塁ホームランはあえて狙わない。再現性のある事業で目の前のことをコツコツと。常に目標と向き合う姿勢を貫いた河端氏は、創業から2年で月商1000万円を達成した。
次ページ > 株価を上げている企業の共通項

取材=戸村光 文章=金二美香

ForbesBrandVoice

人気記事